手嶋氏と榎本氏が明かす「インテリジェンス」の作法

「陰謀論」にダマされない人、じつは意外な「情報収集テク」を実践していた…!

正しいインテリジェンスの作法がある

インテリジェンス小説とは、手嶋龍一氏のベストセラー『ウルトラ・ダラー』以降、切り拓かれたジャンルとされる。そもそも他国と陸で接することのない日本では、諜報活動が重要視されてこなかった。世界の混迷が深まった現代、インテリジェンスが見直され、それを題材とする作品も少しずつ現れている。

映像業界出身の作家・榎本憲男氏は、警察小説を志向しつつも、諜報・情報工作を果敢に物語に取り入れる作風で知られる。新刊を上梓したばかりの両氏が「インテリジェンスとは何か」を語り尽くした。

手嶋氏(左)と榎本氏
 

インフォメーションの「質」、それが最大の問題だ

手嶋 榎本さんは、コロナ禍の日々に起きた事象をDASPAシリーズの最新作『コールドウォー』で次々に活字化して、ほとんど同時進行のような形で扱っておられますね。あらゆる情報が氾濫するなか、どのように取捨選択し整理されましたか。

榎本 コロナ禍の情報は難しいですね。ウイルス感染症に関する医療情報は専門家でも刻々と言うことが変わります。すごく時間をかけてあちこちで調べ、それを自分よりも詳しい人に聞いたりしたものをまとめました。

手嶋 ジャーナリストの感覚からすれば、おそらく榎本さんはとても危険な綱渡りをしておられる。すべての事象を自分で取材し、独自の情報を得ることなどむろん不可能です。新聞、インターネット、映像の情報から現実を再構築し、さらに取捨選択していくことになります。我々がそのようにして受け取っている生の情報、つまりインフォメーションの「質」、それが最大の問題です。有力なメディアだから正しいという決め手にはなりません。

榎本 新聞などのオープン・ソースがヘタレだから、作品を書くのに必要なオープン・ソース・インテリジェンス、つまりはオシント(複数の公開情報を分析し、背景を突き止める手法)ができないという話ですね。

手嶋 そう、オープン・ソースだけではインテリジェンスに高まりませんからね。現下の台湾海峡情勢をめぐる報道の欠陥が、その危うさを象徴的に物語っています。

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