帯状疱疹に罹患したことに気づけないことが多い
――診断は難しいのでしょうか?
私のような「口腔顔面痛専門医」であれば、三叉神経領域の帯状疱疹患者を診る際には、ラムゼイハント症候群の症状が生じていないかを注意して診察するので、発見することができますが、そうでない医師や歯科医師にとっては難しいかもしれません。
というのも、三叉神経領域が帯状疱疹に罹患して口腔内に症状が生じた場合、皮膚の疱疹と異なって、歯肉、粘膜の疱疹が生じていることが認識されず、帯状疱疹に罹患したことに気づけないことが多いのです。
口腔内に強い痛みを生じた患者さんは大概、口内炎か火傷を疑って歯科を受診しますよね。しかし歯科医師が帯状疱疹特有の細かな水疱を発見し、周囲歯肉の感覚過敏を評価して帯状疱疹の診断に到ることは極めて希です。
また帯状疱疹には、疱疹が生じない無疱疹性帯状疱疹や、耳の帯状疱疹の無い、無疱疹性ラムゼイハント症候群も存在します。
――診断が遅れるとどうなりますか?
単純ヘルペスウイルスが主な原因で起こるベル麻痺と比較して予後は不良で、約7割で顔面神経麻痺の後遺症が残ります。患者さんのためには、診断のための症状が全部揃わなくても、ラムゼイハント症候群である可能性を第一に考えて、なるべく早期に積極的な治療を開始することが必要です。
しかしながら、医師のなかには「顔面神経は運動神経なので麻痺は起こっても痛みは伴わない、したがって、あなたの痛みは顔面神経麻痺と関係がない」と診断してしまう人もいます。私のところにも、このような診断・治療によってつらい思いをしている患者さんが2名います。