2021.03.08
# 恐竜

果たして魚竜の起源は?…どんどん見つかる怪しい水生爬虫類化石

不思議な中国中生代の水生爬虫類
好評連載「恐竜大陸をゆく」。前回は「首長竜」についての最新研究をお届けしましたが、今回も絶滅した水生爬虫類についての事情を解説。どうやら、首長竜と並ぶ中生代の海の主役・魚竜と縁のある生き物のようで……。

実は結構ありました…中国の「水生爬虫類」化石

まずは謝らなくてはいけない。前回の記事〈ネッシーよりも不思議?淡水域に暮らした謎多き“首の短い”首長竜〉で、中国においては「首長竜や魚竜などの水生爬虫類の化石発見例は意外に少ない」と書いた。だが、よく調べてみると、実は(申し訳ないことに)結構あった。しかも、特に三畳紀ごろの「変わり種」が大変に多く、重要な化石も多々あったのである。

化石大国・中国はやはり舐めてはいけなかったのだ。今回はそうした不思議な中国中生代の水生爬虫類のなかから、フーペイスクス(湖北鰐:Hupehsuchus)とその仲間について紹介してみたい。約2.47億年前、三畳紀に生息していた生き物で、いずれも体長は1m程度だった。

彼らは尖った頭と、あと一歩で完全なヒレ形に進化しそうな四肢を持つなど、ワニと魚竜の中間のような外見をしていた。水中生活にかなり適応した姿であり、おそらく陸上では卵を生まず、卵胎生だったと思われる。

フーペイスクスの想像図 Illustration by Dorety/Stocktrek Images/gettyimages

付近の農民、変な化石を見つける

フーペイスクスの仲間の化石が最初に見つかったのは、中華人民共和国の建国からほどない1950年代である。湖北省地質科学研究院のホームページ上の記事によると、同省の南漳県と遠安県の境界地帯の山のなかにある「大治石灰岩」と称される石灰岩のなかから、付近の村民と地質調査隊員が多数の脊椎動物の化石を発見したとされる。

このとき見つかった骨格は、細長い頭部に歯のない口、長い頸、縦に高く伸びた背骨を持つうえ、背中は骨盤で覆われているという奇妙極まりないものだった。

なお、時期からすればこのとき発見された化石と同一のものかとも思われる、フーペイスクスと近縁なナンチャンゴサウルス・スニ(孫氏南漳龍:Nanchangosaurus suni)を報告した『古生物学報』(1959年第5期)の中国語論文の概要によれば、ナンチャンゴサウルスの発見地は南漳県巡検区涼水泉郷古井陰坡である。

地元の農民である陶仲英が、家の修理のために石を採掘するなかで見つけたという。1956年に湖北省地質局から調査隊が派遣され、化石を博物館に送ることとなった。

ワニの仲間か、魚竜の仲間か

そして、1959年にナンチャンゴサウルス・スニ、1972年に楊鍾健(C. C. Young)によってフーペイスクス・ナンチャンゲンシス(南漳湖北鰐 Hupehsuchus nanchangensis)が新種として報告された。

当時は中国の古生物学の黎明期で、しかも恐竜ではない謎の巨大爬虫類の研究は充分に進まなかったが、両者は形態の相似から、同じフーペイスクス亜目とされ、主竜類の一種でワニなどの仲間だろうとみなされた。その後、1990年代に董枝明(Dong Zhiming)らが再研究をおこない、彼らの仲間をフーペイスクス目とした。

フーペイスクス・ナンチャンゲンシスの化石(マギル大学レッドパス博物館所蔵)

「スクス」というラテン語の学名や中国語の漢字名に「鰐」の字があることからもわかるように、フーペイスクスは当初は水中生活に適応したワニ(主竜類)に近い生き物かとも見られていたのだが、彼らが系統的に魚竜とワニのいずれに近いのかはながらく議論が錯綜し、特に一般向けには誤解も生まれてきた(たとえば、一般ユーザーの編集が可能で情報のソースも示されないウェブ百科事典の『ピクシブ百科事典』「フーペイスクス」の該当記事などでは、どういう根拠によって書かれたのかは不明だが、魚竜との「近縁性はない」と断じる記述があるほどだ)

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