2022年に予定される冬の北京五輪について、ボイコット論が強まってきた。ウイグル人の大量虐殺(ジェノサイド)など、中国の人権侵害を無視できないからだ。この問題は、ジョー・バイデン政権の対中姿勢を占うリトマス試験紙になる。
ウイグル人に対する人権弾圧については、国連の人種差別撤廃委員会が2018年、推計100万人のウイグル人が強制的に収容所に拘束されている、と報告した(https://www.reuters.com/article/us-china-rights-un-idUSKBN1KV1SU)。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)とニューヨーク・タイムズも19年に相次いで、中国の内部文書を基に強制収容の実態を報道し、このコラムでも紹介した(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69140)。
大量虐殺の証拠があきらかになるにつれて、米国では、共和党のマイケル・ウォルツ下院議員が2月15日、開催地を北京から他都市に移すか、それが難しい場合、米国は北京五輪をボイコットするよう、米国オリンピック委員会に要求する決議案を提出した(https://waltz.house.gov/news/documentsingle.aspx?DocumentID=468)。
共和党のリック・スコット上院議員も2月25日、国際オリンピック委員会(IOC)が他都市での開催を検討し、バイデン大統領が人権侵害に関する会合を開くよう求めるレターを送った(https://www.rickscott.senate.gov/sen-rick-scott-requests-meeting-president-biden-moving-2022-olympic-games-out-communist-china)。
出色だったのは、ニッキー・ヘイリー前国連大使が2月25日、米FOXニュースに寄稿した記事だ。同氏はそこで「いまの共産中国は明らかに、1936年のナチスよりも危険」と指摘し、バイデン政権に五輪ボイコットを求めた(https://www.foxnews.com/opinion/biden-boycott-china-winter-olympics-2022-nikki-haley)。ポイントを紹介しよう。
彼女は「2024年の大統領選に出馬するのではないか」と、とりざたされている共和党の有力候補だ。いまの中国をナチス・ドイツになぞらえて、北京五輪ボイコットを主張したのは、さすがと思う。政治的声明として分かりやすいし、説得力がある。
同じような動きは、カナダや英国にも広がっている。
ボリス・ジョンソン英首相は2月24日、議会下院で「我々は通常、スポーツ大会のボイコットに賛成していない」と消極的姿勢を表明したが、野党の自由民主党はウイグル問題について「目の前で起こった大量虐殺だ」と反発している。
カナダの下院は2月22日、ウイグル人の大量虐殺を非難する決議を反対ゼロの圧倒的多数で可決した。決議は、中国以外での冬季五輪開催を国際オリンピック委員会(IOC)に働きかけるよう、カナダ政府に要求している。
日本でも、在日のウイグル人やモンゴル人、香港人の代表らが2月4日、日本外国特派員協会で記者会見し「人権弾圧は五輪憲章の精神に反する」と訴え、北京五輪のボイコットを求めた(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020401045&g=int)。