130億年以上前の「見えない銀河」を観測したい…そのカギとなる場所は南極だった

「常識」が研究でひっくり返る瞬間

かつての「常識」が研究によってひっくり返る瞬間 

中井教授は15年以上前から南極天文台設置のために動いてきた。国立極地研究所が南極内陸部に設置を予定する「新ドームふじ」。そこにテラヘルツ望遠鏡を設置するための技術的な研究も進めている。

「雪と氷でできた南極大陸に天文台を設置するにはさまざまなハードルがあります。望遠鏡の重量は100トンにもなりますが、それを柔らかい雪原の上に固定しなければいけない。

また天文台に設置する直径10mのアンテナが温度変化や重力によってわずかでも歪んでしまったら精度が出ないので、髪の毛の4分の1以下に歪みを抑える必要があります」

それらの困難な技術的ハードルも10年以上に及ぶ研究で、乗り越えられる目処が立ったと中井教授は言う。研究室には南極天文台に設置するアンテナと同タイプの受信機があるが、それも学生たちと苦心しながら設計・組み立てを行ったものだ。

「南極天文学の実現のためには、宇宙や天体観測の知識はもちろんですが、南極に関する地学的な知識や望遠鏡設計のための工学知識など、多くの分野にまたがる幅広い学問が必要となります。学ぶのは大変ですが、その求められる知見の広さが面白さでもあります」

2016年に、調査のため南極大陸のドームCというところにあるフランス・イタリアの共同観測基地・コンコルディア基地へ

「学問の世界で常識とされていることを鵜呑みにせずに、疑いなさい」と中井教授は学生たちに常日頃から指導している。それはこれまでも度々、かつての「常識」が新しい発見によってひっくり返されることが、サイエンスの世界では起こってきたからだ。

例えば、中井教授はある学生とともに「万有引力を“変形して”計算すれば、存在すると考えられる星の量で銀河の回転が説明できる(暗黒物質は不要)」ことを示した。

「ニュートンに逆らうなんてありえない、と思う人もいるでしょうが、『当たり前』を疑うところから、新しい発見が生まれます。観測した事実を説明する仮説を、先入観を持たずに自由な発想で考えることが大切なんです」

中井教授が1995年に世界で初めて巨大ブラックホールの確証を得た銀河メシエ106(M106)。可視光の望遠鏡では観測できないこうしたブラックホールの解明にも取り組んでいる
関西学院大学
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