「初めて銀行で借金をした」落合務シェフが語るコロナ禍の飲食店が「本当に伝えたいこと」

一志 治夫 プロフィール

前向きに考えて、進んでいかないと

ーー今回、外食が思うようにできなくなって、逆に外食文化の大切さに気づいた人も多いですね。

単にご飯でお腹をいっぱいにするだけなら、2人で食材買って、1000円でお腹いっぱいになるじゃないですか。レストランに行ったら、なかなか1000円じゃ食べられない。そういう意味では、わざわざレストランで食べなくてもいいんですよ。食べなくてもいいんですけど、レストランで食べるのって、そこに何か希望があるじゃないですか。レストランを予約して、お腹をすかせて向かうときの楽しみ、わくわくするような前向きな気持ち。そんなとき身体からは本当にいいオーラが出ているでしょ。

イタリア語ではレストランはリストランテというんですけど、それはリストラの語源なんです。イタリア語で言うとリストラーレ、再構築、改めて力をつけるという意味です。レストランに行ってパワーをもらう、パワーをつける。レストランはそういう場所なんですよ。僕たちは、そういういい場所をお客様に提供させていただいているんです。だからこそ、お客様が喜んで、安心して使ってもらわないと僕たちも困るし、何か不安があったら、心から「いらっしゃい!」という感じにはなれないんです。

僕は、僕たちは、リーマンショックのときも、東日本大震災のときも乗り越えてきた。今回も、料理の質が落ちたとか、そういうことではなく、お客さんが来られなくなったわけです。だから、僕らは、前向きに考えて、進んでいかないと。

僕は、いつも「それは難しい」とか、「できない」とかマイナスな言葉を使いたくないと思っています。難しい、と口にしたら、それでぱたっと終わっちゃうじゃないですか。だから、「それは簡単じゃないかも知れないけど」、「時間がかかるかもしれないけれど」と言いながら、先につなげていきたいんです。前向きな姿勢さえ忘れなければ、乗り越えられない壁はない、と信じています。

 
落合務(おちあい・つとむ)1947年東京都生まれ。1976年フランス料理の料理人として渡仏後、修業を積み帰国。東京・赤坂『グラナータ』の料理長に。1997年銀座『ラ・ベットラ・ダ・オチアイ』のオーナーシェフに。わかりやすいレシピが人気で、講習会、メディア出演など、全国を忙しくとびまわっている。2014年に刊行された『「ラ・ベットラ」落合務のパーフェクトレシピ』(講談社)がコロナ禍のなか10万部を突破
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