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日本製世界No.1スパコン「富岳」の共用スタートが意味するもの

「電子立国日本」の再興はなるか

昨年6、11月の世界スパコン・ランキング(全5部門)で、基本的な計算速度やAI処理能力をはじめ4部門を制覇した日本製スーパーコンピュータ「富岳」が、3月9日から本格的な共同利用を開始する。

同機を所管する文部科学省によれば、すでに昨年4月から富岳の計算資源の一部を前倒しで利用し、新型コロナウイルスの飛沫シミュレーションや治療薬候補探索などの研究を進めてきたが、今後は、その持てる力をフル活用して日本が直面する様々な課題解決に貢献していくという。

新型コロナ治療薬の開発

しかし、それは決して一筋縄ではいかない。昨年7月、京都大学大学院の奥野恭史教授らの研究チームが富岳を使った創薬シミュレーションから、本来、寄生虫用の薬である「ニクロサミド」などが新型コロナ感染症の治療薬としても有効であるとの分析結果を発表した。

その後、奥野教授らはニクロサミドの開発元である独バイエルに対し、「一緒に臨床研究(治験)を行えないか?」と打診したが、同社からは「新型コロナ感染の患者数が少ない日本で、あえて臨床研究をやるメリットが感じられない。むしろ(感染者の多い)他の国で治験を実施する計画だ」と断られてしまった(その後、改めて日本からも何か貢献できないか厚労省を介してバイエル社と交渉中という)。

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実際、昨年10月末に米国でニクロサミドの臨床研究がスタートし、新型コロナ感染症に対しレムデシビルよりも高い治療効果を示すのではないかと期待が高まっている。このケースは、富岳のような世界トップのスパコンに何が出来て、何が出来ないかを如実に物語っている。

 

確かに奥野教授らの研究成果からは、富岳を使えばわずか数ヵ月で新型コロナ治療薬の候補を探し出し、すぐにでも臨床試験に入れることが見て取れる。しかし、その先にある実用化(新型コロナ治療薬としての製品化)に向けては、バイエルのような製薬会社の経営判断やそれを取り巻く社会情勢なども絡んでくる。いくら並外れた計算能力を有する富岳でも、そこまでは如何ともし難い。

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