18歳で初体験、21歳で亡くなる悲劇も起きている

宮城さんは、横浜市立大学産婦人科主任教授、日本産科婦人科学会特任理事(子宮頸がん検診・HPVワクチン促進担当)として、子宮頸がんの予防啓発に力を尽くしてきた。心の中にはいつも、助けられなかった患者さんたちの姿があるという。

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「忘れられないのは、まだ21歳という若さで子宮頸がんにより亡くなった女の子。難治性で進行が早い、子宮頸部腺がんでした。18歳でボーイフレンドができて、そのとき初めてセックスを経験したそうです。それからわずか3年で逝ってしまったのです。

また、あるとき妊娠中の大出血(※1)で救急搬送されてきた妊婦さんは、搬送前には陣痛に伴う胎盤の異常などによる出血と思われていたのですが、子宮頸がんが進行して起こる出血だったのです。帝王切開をして無事出産。治療のため子宮を摘出しましたが、すでにがんは深刻な状況で、お子さんが2歳のときに亡くなりました。子宮頸がん合併妊娠は、現在でも多くの産婦人科高次施設の勤務医は経験しています

※1子宮頸がんは異形成といわれる前がん状態の時には、症状がない。進行し浸潤がんまで進むと性交後出血などによる不正出血を起こす。

妊娠中の子宮頸がん発覚では、厳しい選択を迫られる場面もあるという。(写真はイメージです)photo/GettyImages

人気漫画『コウノドリ』の13巻、14巻のエピソードでも妊娠中の子宮頸がん発覚が描かれたことがあった(別記事でその漫画のエピソードをご紹介している)。妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合、患者や家族は難しい選択を迫られる。しかも、妊娠中の子宮頸がん発覚は稀な事例ではないという。

「子宮頸部のみを切り取る円錐切除術で治癒できれば子宮を残すことができますが、がんの進行や広がりによっては、赤ちゃんを諦めて子宮全部を摘出しなくてはいけません帝王切開で出産を早めた場合、週数によっては赤ちゃんに障害が残る可能性も。また、無事出産できたとして、ご本人が亡くなってしまう場合もあります

子宮頸がんは、ハイリスクのHPVが感染して数年から、長い方だと数十年たってから発症します。その間に検診を受けていただければ、早期で発見できますが、妊婦健診で初めて検診を受け、進行したがんが見つかることも。ごく普通の健康に過ごしていた若い女性たちが、キャリアを叶えたい、子どもを持ちたい、子どもの成長を見守りたいという夢半ばで亡くなってしまう。患者さんを思うたび、ワクチンをうっていたら……と、今でも考えさせられます