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菅首相長男「接待事件」がこのまま終わらないと言える「シンプルな理由」

事件の行方を占う「3つの視点」

総務省幹部接待事件に対する市民団体の告発が相次いでいる。

2月26日には「検察庁法改正に反対する会」が、接待した東北新社側を「贈」、接待を受けた総務官僚側を「収」とする告発状を東京地検特捜部に提出した。3月3日には「税金私物化を許さない市民の会」が続き、今後も同種の告発が予想され、特捜部は受理して捜査の流れとなろう。

長男の会食接待問題で山田真貴子内閣広報官が辞任するなど大きな影響が出ている〔PHOTO〕gettyimages

ただ、専門家の間では、「贈収賄事件として立件するのは難しい」(検察OB弁護士)という声が、早くも聞こえる。

「まず金額が少ないこと。最高額の谷脇康彦・総務審議官でも4回で11万8430円。社会通念上は儀礼の範囲内となる。しかも被告発人に菅(義偉)首相の長男(正剛氏)が含まれており、政権中枢を巻き込みかねない。検察は現役首相の周辺を捜査しないのが不文律なので、追及の手が緩む」(同)

 

確かに70年を超える地検特捜部の歴史は今回の事件の立件の難しさを示すが、裁判員裁判の開始、検察審査会法改正による検察不起訴案件への異議申し立て、自白の強要を避ける取調過程での録音録画、その反対給付としての司法取引の導入など刑事司法の環境は大きく変わった。

時代は、司法を専門家(裁判官、検察官、弁護士)に任せるだけでなく、国民も参加して「市民の常識」を反映させ、有罪率が99%以上という検察官=捜査機関の無謬性を排する方向に向かっている。

事件の行方を占う「3つの視点」

その流れからすれば、捜査着手前から「不起訴」を予想するのは間違っている。以下に、事件の行方を占ううえで、必要な視点を指摘しておきたい。

第一に、「金額が少ない調査」は、総務省職員を中心としたチームで行なわれたことだ。大臣官房の職員7名とコンプライアンス(法令遵守)に詳しい第三者的立場の弁護士が1名。2月9日に発足、調査項目は人事院の国家公務員倫理審査会の指導に従い、幹部職員と東北新社側の聴取を行ない、東北新社が保管する帳簿や伝票から過去5年分の接待履歴や金額を特定した。

24日までの約2週間で調査を終えて公表しており、期間は短く、スタッフは少なく、弁護士名も含めて調査チームの詳細は不明で“お手盛り感”は免れない。象徴するのが、「接待を受けたのは東北新社のみ」という幹部職員らの主張を丸呑みしていること。5年間で39回、60万円超の接待が1社のみで行なわれ、同業他社が監督官庁に対し、一切、何もしないなど、信じがたい。

 

第二は、接待を受けた山田真貴子前内閣広報官を含む13名の大半は、衛星放送事業を所管する情報流通行政局に所属していたことだ。東北新社がスターチャンネル、囲碁将棋チャンネルなどを持つ衛星放送事業者であることを考えれば利害関係者。国家公務員倫理規定では、利害関係者からの接待は、「原則禁止。例外として自己負担なら許容。ただし自己負担が1万円を超える場合事前に届け出」が求められている。

13名のうち文春砲に撃たれた谷脇審議官ら4名は、報道(2月3日)の直前、自己負担分を振り込んでいるが、そんな姑息が通用するわけもない。また、贈収賄にあたる可能性がある接待供応が放送行政に影響を与えた可能性については、聴取を受けた全員が、「利害関係者と思わなかった」といい、「放送の話は出たかも知れないが、利益誘導の話はなかった」と、口を揃えている。

強制力を持った取り調べでなければ、国民は納得できない。

第三に、受理した特捜部が捜査着手しても、官邸に忖度する可能性があり、メディアとともに監視する必要があることだ。

安倍晋三政権下の「モリ(森友学園)、カケ(加計学園)、桜(桜を見る会)」で証明されたように、「法務・検察」も官僚機構の一部であり、安倍官邸に忖度した。

例えば、森友学園事件である。財務官僚は、「民主主義の根幹を支える国民共通の知的資源で、主権者である国民が主体的に利用する」(公文書法総則第一条)と規定される公文書を、安倍首相(当時)に忖度、14の決裁文書で昭恵夫人や政治家の存在を消し、財務省にとって都合の悪い部分を削除した。

 

告発を受理した大阪地検特捜部は、虚偽公文書作成罪、公文書偽造・変造罪など三つの想定される疑惑を捜査したものの、「改ざんによって文書の趣旨が大幅に変わったとはいえない」という国民感情からすれば納得できない理由で不起訴とした。籠池泰典前理事長夫妻をサッサと事件処理して逮捕起訴したのに比べると落差は大きい。

また、そこには「首相在職中は周辺を含めて捜査しない」という前述の不文律も作用しており、事実、「桜を見る会」の前夜祭の費用補填をめぐる疑惑は、弁護士らや市民団体の告発を、理由をつけて受理せず、捜査着手は安倍氏が昨年9月、持病の悪化を理由に首相を辞任してからだった。捜査の結果、特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で秘書を略式起訴、安倍氏を不起訴とした。

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