もしかして君は恋をしているの?

作り話だと思いますよね。そんな出来すぎたことあるわけないじゃんって思いますよね。僕だってそう思いましたよ。
っていうか誰よりも僕自身が「嘘だ!!」って思いましたよ。さっきまで聴いていた楽曲を歌っているアイドルが目の前に現れるなんて。ハロプロが好きすぎて遂に幻覚まで見だしたのかと思いましたよ。

トレンドのオーバーサイズコートを羽織ったカジュアルな装い。
改札の向こうをちらちらと眺めて、誰かと待ち合わせしている様子。

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ってか紗友希! マスクして!! あなたアイドルなんだから!!!
今や街のほぼ全員がマスクをしている時代なのに、マスクも帽子もサングラスもしない、無防備なオフの日のアイドル。
良い意味で芸能人らしくない、飾らないスタイルに高感度が爆上がりしながらも、周囲にバレないか僕の方がヒヤヒヤ……。

もちろん、このときはまだ他人の空似である可能性も否定できませんでした。
念のため少し離れたところから見守っていると、改札の奥から、マスクをした業界人っぽい若い男性二人組が。
彼らが紗友希らしき女性に歩み寄ると、そこで彼女が一言。

「こんばんは」

それで僕は確信しました。ああ、人違いじゃない。
ハロプロファンなら、声で確信できる。はきはきとしたハスキーボイス、彼女は間違いなくJuice=Juiceの高木紗友希だと。

「なに食べたい?」
彼らもこれから食事へ行くのか、男性のうちの一人が紗友希にそう語りかけると、三人は日暮れの街へ消えて行きました。

さすがに後をつけることはせず三人の背中を見送ったのですが、僕にはある疑念が。
「なに食べたい?」確かにそう聞こえた男性の声に、なんだか妙な距離の近さを感じたのです。

ふと、僕はある話を思い出しました。
「芸能人は、週刊誌の目を避けるために、外で異性と二人きりで会うことはしない。必ず友人や家族を連れて三人以上で会うように徹底している」という、いつかどこかで得た知識。
てっきりスタッフかと思ったあの男性は、もしかしたら恋人なのかもしれない。

紗友希……もしかして君は恋をしているの?
とんでもないスキャンダルの目撃者になってしまった興奮が収まらず、僕はしばらく駅前で棒立ちするしかありませんでした。