大切な人が「陰謀論」にハマってしまったら、どうすればいいのか

塚越 健司 プロフィール

否定せずに聞く

まず、相手の話を否定せずに聞くことである。前述の通り、陰謀論や過激な思想の広がりの背景には、大きな社会不安が認められるだろう。「不安」がテーマであるならば、「エビデンス」を最初に持ち出すよりも、相手の言葉やその話し方、要するに「言葉」より「心」に注意したほうがいいだろう。

話している相手がなぜそのように思ったのか、相手の心(具体的には不安な気持ち)を丁寧に聞き、読み解いていくことではじめて、言葉の壁で武装したその内側にある当人の心にアクセスできる。そこからはじめて心がほぐれ、お互いの気持ちを共有し、少しずつ共通のエビデンスに合意できる可能性が生じるだろう。

〔PHOTO〕iStock

例えば、自分は悪くないと思っていても、謝罪を強要されて謝った経験は誰にでもあるだろう。このように、私たちは日々の生活の中で心の内に不安や不満を溜め込んでいる。鬱屈された気持ちを吐き出さなければ、他者の声にも、自分の内なる声にも耳を傾けることは難しい。

自らの声に耳をすますという意味では、犯罪者の更生に関わった故・岡本茂樹氏(臨床教育博士)の実体験を踏まえた著書『反省させると犯罪者になります』が参考になる。犯罪者は常に謝罪を要求される中で、裁判や刑務所では減刑を狙って謝った「ふり」をすることがある。しかしそれは、本人のためにも社会のためにもなっていない。被害者や、自身のこれまでの人生に対する負の感情など、心の底に秘めた気持ちを吐き出さなければ、自分の気持ちと向き合うこと、ひいては本当の謝罪、更生の道をひらくことは困難であると岡本氏は述べる。

筆者は心の声を聞くことが、遠回りであっても対話につながると述べたいのであって、安易に陰謀論と犯罪を結びつけたいわけではない。陰謀論者との対話は反論や否定から入るのではなく、粘り強く相手と触れ合うことが重要だ。

編集部からのお知らせ!

関連記事