文/FRaUweb

漫画『コウノドリ』の伝える力

3月4日は、国際HPV啓発デー
HPVに関する特設サイトや情報配信なども行われている。

『HPV』とは、「ヒトパピロマウイルス」というさまざまながんを引き起こすウイルスのことです。女性は子宮頸がん男性は咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなどに罹患する可能性があり、男女ともに深くかかわるウイルスだ。

実際、日本では毎年約1万人もの女性が子宮頸がんに罹患し、この病気で年間2900人が命を落としている(2019年のがん統計予測/国立がん研究センター情報サービス)。しかも、20代、30代の若い世代の罹患率も高いため、妊娠、出産といったライフステージにも影響を与えることになる。

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そんな厳しい子宮頸がんを漫画で描いた作品がある。それは、鈴ノ木ユウさんが描く漫画『コウノドリ』(13巻40話・14巻41話「子宮頸がん」)だ。『コウノドリ』は名作が多い作品だが、その中でも「子宮頸がん」は、心に残る作品として挙げる方が多いエピソードだ。

物語は、妊娠12週目で行った妊娠初期検査で、子宮頸がん検査を行った女性に子宮頸がんが発覚。出産かがんの治療かという現実の中で、選択に迷う夫婦と医師たちの奮闘が描かれている。そして、そこに主人公の産婦人科医・鴻鳥サクラの生い立ちなども絡み、『コウノドリ』の根幹ともなるエピソードともいえるのだ。

(c)鈴ノ木ユウ/講談社『コウノドリ』13巻より

実はこのエピソード、昨年10月1日に、鈴ノ木さんのご厚意で、218ページ(!)を一週間限定の期間限定試し読み記事として記事にした。すると想像を超える反響をいただいた。

「HPVという言葉を知っていてもどこか他人事だった。でも、漫画で読んだら、ちゃんとHPVワクチンの事を考えて、子宮頸がん検診も受けようと思った」

「もしも妊娠中に子宮頸がんが発覚したら、と考えるだけで怖くなった。多くの女性に読んでほしいですね」

「彼女といっしょに読みました。いっしょにワクチン接種をしようと思いました」

「私は妊娠初期の子宮頸がん検査でがんがわかり、妊娠を諦め、子宮を全摘しました。決して稀な話ではないと思います」

こういった意見をたくさんいただき、『コウノドリ』が持つ伝える力を改めて感じざるを得なかったのだ。

漫画以上に厳しい現実と向き合う妊婦さんもいる

このエピソードでは、子宮頸がんの原因であるHPVのこと、また、HPVを予防するHPVワクチンに関しても伝えている。しかし、『コウノドリ』が掲載されたのは、2016年。当時は、HPVワクチンの副反応報道が冷めやらぬ時期で、多くのメディアもHPVワクチンに関してまったく報道をしなくなっていた時期でもあった。

厚労省が積極的勧奨をしない状態で、メディアも動かない中、HPVワクチンに関してどう描くかは、医療監修をされた医療チームも心を砕いた点だったと聞く。

しかし、それでもストーリーの中に冷静な医療側の声を丁寧に盛り込んだのは、医療現場で行っている悲しい現実があるからだったという。HPVが原因で罹患する子宮頸がんの患者は、若い世代も多く、妊娠の初期検査でがんであることが見つかるケースもあるからだ。

(C)鈴ノ木ユウ/講談社『コウノドリ』13巻より

実際に、臨床の現場にいると、エピソードで描かれているよりも厳しい現実と出会うこともあります。出産されて、子宮全摘などさまざまな手を尽くしたのですが、その後しばらく経って亡くなったというケースもあります。子宮頸がんは“まさか自分がかかるなんて”と思いがちな若い世代が罹患することが多いのです」というのは、横浜市立大学医学部産婦人科学教室主任教授 宮城悦子医師だ。

そういったケースと出会うたびに、そこに携わる医師たちは、「HPVワクチンで防ぐことができたかもしれないのに……」と悔しい思いを重ねているのだ。

前回の記事で、鈴ノ木先生からもこんなメッセージをいただいている。

肯定派、否定派、、HPVワクチンには様々な人の思いがあります。僕は臆病なのでHPVワクチンを接種しろ!だとか、接種するな!だとかを漫画で伝えるつもりはありません。ただ近い将来、『HPVワクチンのことをもっと知っていたら…』と後悔する女性やその両親、家族がいなくなります様にと、それだけの想いで描きました

そして、「HPV啓発デー」である3月4日本日から、鈴ノ木ユウさんのご厚意で、再び1週間期間限定で、218ページにわたる「子宮頸がん」のエピソードを無料試し読みできることに