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コロナ禍で急増する「ジョブ型雇用」。その成功の最大の秘訣とは?

コロナ後の未来年表(7)
コロナ禍や少子高齢化に伴う経済社会構造の変化により、「ジョブ型雇用」という新たな雇用形態を導入する気運が急速に高まってきている――88万部超のベストセラー『未来の年表』シリーズの著者でジャーナリストの河合雅司氏が、DX時代の雇用のあり方、その成功のカギを探ります。

増えつつあるジョブ型雇用

コロナ禍を背景として「ジョブ型雇用」への移行の動きが広がってきた。

富士通や三菱ケミカルなどに続いて、川崎重工業も2021年度から年功賃金制度を全廃する。川崎重工業の場合、全従業員1万7000人を対象に役割や成果に応じた賃金やポストを決めるという。

春季労使交渉でも議題に上るところがあり、製造業に限らずさまざまな業種で生産性の向上に向けた実力本位の人事評価への模索が続いている。

ジョブ型雇用とは、企業があらかじめ職務内容を定め、その成果で従業員を処遇する雇用形式のことである。職務を限定して採用するので、その範囲で働くこととなる。年功序列で自動的に管理職になれるというわけではない。反対に、若手であっても、自分がふさわしいと思えば手を挙げることができる。

ジョブ型雇用は転職しやすい(Photo by iStock)

企業が客観的な指標で職務遂行能力を判断するので、働き手は転職しやすくなる。モノやサービスと同じく「ジョブ」が市場で取引されるようになると考えればよい。働き手は自ら能力を高め、より大きな報酬が得られる仕事を見つけてステップアップしていくことになる。

これに対して、多くの日本企業は、職務を限定せずに多様な仕事を経験させる「メンバーシップ型雇用」を採用している。従業員は業務命令によって転勤や配置転換され、さまざまなポストを経験するのが一般的だ。

 

DXへの対応を急ぎたい

ポストの職務内容や責任範囲は不明確のため、成果を評価しづらく、長時間労働にもなりやすい。従業員は主体性を発揮しづらく、「指示待ち」になりやすい。生産性の向上を妨げているとの批判もある。

しかしながら、メンバーシップ型雇用は終身雇用や年功序列型の賃金制度という労働慣行と非常に相性が良く、戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、工場などの共同作業で非常にうまく機能してきた。「雇用の安定」を求める〈社会の要請〉もあって、いまだ日本企業の主流となっている。

ここにきてジョブ型雇用の気運が急速に高まってきたのは、コロナ禍で先行きが見通しづらくなったこともあるが、少子高齢化に伴い社会構造が変わってきたことが大きな理由だ。

日本は人手不足やマーケットの縮小が避けられず、その打開策としてデジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上や高付加価値のビジネスモデルへの転換に踏み切らざるを得なくなってきている。

GAFA」に代表されるような知的生産物を創造するビジネスモデルが世界を席巻する時代となっており、長期的な成長を描くには革新的なサービスや製品開発が不可欠なのだ。各社ともDXへの対応を急ぎたいという本音がある。

GAFAが世界を席巻(Photo by gettyimages)

デジタル技術の導入に合わせて新規プロジェクトを立ち上げるには、専門性の高い人材の確保が急務であり、年功序列でゼネラリストを育成するメンバーシップ型雇用ではとても対応できない。勤続年数による技能やノウハウの積み上げでは間に合わないということである。

DXに伴って事業を売却するケースも増えてくるとみられるが、雇用が職務に付随するジョブ型雇用であれば、そこで働く人をそのまま引き継ぐことも可能となる。雇用を守りやすくなれば、結果として事業売却もスムーズになるという計算もある。

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