「常識」を見極めるための最良の武器

『自由になるための技術 リベラルアーツ』その4
山口 周 プロフィール

リーダーにこそ必要なリベラルアーツ

イギリスという国が養ってきた深い人間理解と、皮膚感覚の知恵は、卑近な言葉で言えば、「コモンセンス」ということになるでしょう。経営リーダーにとって、重要な判断の縁になるコモンセンスを養うという意味でもリベラルアーツは重要です。

数理モデルなどを用いて解析的に解ける問題は、せいぜい部長クラスまでで解決するものであり、経営層には簡単に解など出ない、難しい問題ばかりが次々に上がってくるはずです。経営リーダーにはそもそもその問題が解析的に解けるのかどうかを判断するセンスが不可欠ですし、解析的に解けない問題に対しては、自分に蓄積された知の中から判断するほかありません。その縁になるのが「人間というものの本質を鑑みれば、こうなるはずだ」という深い意味でのコモンセンスなのです。

もう一つ現代の経営リーダーにとって重要な役割が、「質的な意味を与える」ということです。そのためには自分の中に広い世界観を持つことが重要で、そういった意味でもリベラルアーツは有効です。自分のコナトゥスを発揮させることと同様、仕事に確かな意味を感じて働く個人や組織は大きな競争力を持つものです。

 

例えば、格安航空会社のピーチ・アビエーションは、井上慎一社長(当時)自らが会社の存在意義を「戦争を無くすため」だと言っています。

過去の不幸な戦争は、互いに国を行き来していないから、互いをよく知らないから起こってしまった。未来を担う若者に多くの国に行って文化を体験してもらうことが最高の教育である。そのためには運賃を下げなければいけないし、たくさんの路線も敷かないといけない。それにはまず安定的な経営基盤を確保する必要があるから「コストが大事」と訴えるのです。やっていることは他の格安航空会社と同じですが、質的な意味が与えられていることによってそれが社員の原動力となり、同社の強さにもつながっているのです。

質的な意味を設定するためには、より大きな価値の連鎖として、いま自分たちがやっている仕事が「世の中」のどういう意味につながっているのか、そこにどうやったら貢献できるのか、自分の中に広い世界観を持ち、高い視座から考えていくことが必要です。

さらに現代社会では「共感」も一つのキーワードになっていますから、相手の思考の枠組みを捉えるという意味でも、自分の中に広い世界観を持つことはますます重要になっていくといえるでしょう。

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