アメリカの一流大学がリベラルアーツを重視する理由

『自由になるための技術 リベラルアーツ』その2
山口 周 プロフィール

アメリカの例のように、行き過ぎたサイエンスやエコノミーといった価値基準に対し、反対のベクトルへとバランスを取ろうとする動きは世界的な潮流にあると感じています。

ハーバードやスタンフォードなど、アメリカの大学では、学部ではリベラルアーツ系の講義を中心に据えていることが多いのですが、2000年代の終わり頃からは、さらにそれを増やす方向へと大きく舵を切っているそうです。実学は大学院で学ぶものなのです。

また、グローバル企業の多くが幹部候補生をMBA(経営学修士)ではなく美術系大学院へと送り込んでいること、アート系人材を次々と招聘していることなども、そんな最先端の潮流を物語っていると言えるでしょう。

 

OSとしてのリベラルアーツ 

私は、このような時代にわれわれにとって必要なもの、それがリベラルアーツだと考えています。ではここでいうリベラルアーツとはどのようなものでしょうか?

教養または教養主義は昔からずっとあったわけですが、いま求められているリベラルアーツとは、コンピューターでいえばOS――私たちの行動や判断を司るソフトウェア――のような根本思想なのです。

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対して、ロジカルシンキングやマーケティングの知識といったものは、アプリ――状況に応じて使い分ける道具――であり、従来言われていた教養もまた一種の道具としてのものが多かったと思います。

もちろん道具は道具で大切なのですが、どの場面で何を使うかというのはOSの判断です。ですから自らの足元をより確かなものにするためにはOSが重要となる。古今東西の、幅広い教養・知識を備えて、例えばワインや絵画などについて語れるようになれば、飲み会の話題としては役立つでしょうが、本当に大事な判断をする力や勇気を持って行動する原動力にはなりません。

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