美意識に限らず、人の感性に訴えるものが重要視されてきているというのは、近年の世界的な潮流です。
例えばアメリカでは、2008年のリーマンショック以降、マインドフルネスが一種のムーブメントになっています。シリコンバレーでは、トレーニングとして取り入れていない会社はないほど普及しています。
マインドフルネスとは、「いまという瞬間に意識を向けるもの」で、言うなれば外部ではなく、自分の内部に目を向けていくための手法です。自分が何に価値を置いているかを認識することは、創造性の源にもつながっているのではないでしょうか。
世の中は、何かが過剰になり何かが稀少になると、なんとかバランスをとろうとする動きが常に生まれるものだと思います。
例えば、1970年代前後のヒッピームーブメントや『ホール・アース・カタログ』(1968年に作家のスチュアート・ブランドによって創刊されたヒッピー向け雑誌。スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式のスピーチで語ったことで有名な「Stay hungry. Stay foolish.」は同誌最終号の裏表紙に記載された言葉)なども、50年代の行き過ぎた物質主義や享楽主義への一種の反動といえるでしょう。
いまのアメリカで、マインドフルネスがこれだけ浸透しているのも、リーマンショックに代表されるような、行き過ぎた金融資本主義に対する違和感から来ているのではないかと思います。