photo by gettyimages

その意味、わかってる?歴代「ダーウィニズム」に翻弄されたダーウィンの主張

カッコいいワードは誤解も生じやすい

ダーウィニズムやネオダーウィニズムとは何か

「ダーウィニズム」とか「ネオダーウィニズム」とか言った言葉を、ときどき聞くことがある。これらの言葉には複数の意味があるので、誤解を生じやすい。そのため、できれば使わない方がよいと思うけれど、すでに使われている文章を読むときには、そうも言っていられない。意味がわからなくては困るので、ここで簡単に整理しておこう。

【写真】ダーウィンとハクスリー、ヘッケルチャールズ・ダーウィン(左)と、彼の主張を支持したトマス・ヘンリー・ハクスリー(中)、エルンスト・ヘッケル(右) photos by gettyimages

ダーウィンはいろいろなことを主張した。主なものとしては次の6つがある。

ダーウィンの主張

  1. 生物が進化すること
  2. 進化のメカニズムとしての自然淘汰説
  3. 進化のメカニズムとしての用不用説
  4. 生物は枝分かれ的に進化すること
  5. 生物はゆっくり進化すること(漸進的進化)
  6. 進化は進歩ではないこと

ダーウィニズムやネオダーウィニズムは、この6つの主張の一部を認めて一部を認めない説である。

自然淘汰説の失墜

ダーウィンの著書である『種の起源』(1859)が出版されてしばらくすると、その主張の一部は、広く社会に認められるようになった。もっとも広く認められたのは1. 生物が進化すること4. 枝分かれ的に進化することで、もっとも認められなかったのは2. 自然淘汰説であった。

ダーウィンの番犬と呼ばれたイギリスの生物学者トマス・ヘンリー・ハックスリー(1825~1895)でさえ自然淘汰説には懐疑的であったし、ドイツの生物学者でダーウィンの強力な支持者であったエルンスト・ヘッケル(1834~1919)も、自然淘汰説を進化のおもなメカニズムとは見做さなかった。

彼らは一般に「ダーウィニズム」の支持者と呼ばれるが、この時期の「ダーウィニズム」(ダーウィニズム[1]としよう)の意味は、主に1. 生物が進化することを指しており、2. 自然淘汰説は入っていない。

19世紀末における数少ない2. 自然淘汰説の支持者は、イギリスの進化学者アルフレッド・ラッセル・ウォレス(1823~1913)とドイツの動物学者アウグスト・ヴァイスマン(1834~1914)であった。彼らが提唱した説は「ネオダーウィニズム」(ネオダーウィニズム[1]としよう)と呼ばれ、ダーウィンの主張の中で3. 用不用説をほぼ否定し、2. 自然淘汰説だけを強調した説であった。しかし、彼らの努力も空しく、自然淘汰説は失墜の一途を辿っていった。

【表】ダーウィンの主張、受容の変遷〜19世紀篇〜ダーウィンの主張に対する、19世紀から20世紀初頭にかけての受容

さらに、メンデルの法則の報告され、"埋没した"とされるその法則が20世紀初頭に再発見されると、変異の連続性と非連続性が問題となった。

関連記事