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「夫婦はどちらかが先に逝く…」残された者が直面する「悲しみの日々」

故・野村監督は何を考えていたのか
週刊現代 プロフィール
〈どんな番組を見たのかも覚えていない〉
〈昨日の夜に何を食べたのかすら覚えていない〉
〈金銭欲も物欲も性欲も、もうない。何も感じない〉(前掲書より)

沙知代さんの死からおよそ2年後、野村さんも自宅の風呂場で倒れ、そのまま息を引き取った。死因は妻と同じ虚血性心不全だった。

野村さん夫妻は、会話の少ない夫婦だったという。この二人と同じように「何十年も寝食を共にしてきたんだから、いちいち言葉を交わさなくても分かり合えるだろう」と思い込んでいる人は、世間にも多い。

だがそんな夫婦ほど、お互いの秘密や悩みごとを打ち明ける機会を逸してしまいがちだ。場合によっては、ひとり残された側が心身だけでなく、経済的な面でも悲劇に見舞われる。

もっと早く、きちんと話しておけばよかった。川手豊子さん(72歳・仮名、栃木県在住)は夫の葬儀が済んだあと、ひとり唇をかんだ。77歳の夫が脳梗塞で急逝してから、夫が少なからぬ借金を抱えていたと知ったのだ。

 

「パソコンの中に、遺言書の下書きのようなものがあったんです。もちろん手書きじゃないので無効なのですが、そこには『為替取引で大損をして300万円借金を作ってしまった。申し訳ない』と書かれていました。

真面目で酒も飲まず、パチンコも競馬もしない夫でしたから、突然逝ったことにもショックを受けたのに、秘密もあったなんて……でも老後資金の足しにしようと頑張っていたなら、今さら責める気にもなれません。

決して小さい額ではないけれど、他の財産を相続放棄するほどではないので、手持ちのおカネから私が返済するしかない。これで老後資金の計画が大きく崩れてしまいました」(川手さん)

「もし本当のことを言ったら、愛想を尽かされてしまうんじゃないか」と思うと、大事なことを切り出せない。「この歳になって、まさか隠しごとなんてないだろう」と思い込んで、面と向かって話をしない。だがそのまま相手がいなくなれば、もはや手遅れだ。

夫婦のどちらかが、いつか必ず「ひとりの朝」を迎えることになる。この当たり前の事実を直視して、覚悟と準備を固めておかなければならない。

『週刊現代』2021年2月27日・3月6日号より

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