2021.03.03
# 株式投資

「恐れ・不確実・疑い」にバツ印。株高に熱狂する人たち共通の特徴

内向型のほうが暴落に強い理由(2)
スーザン・ケイン プロフィール

エンロンに取りついた悪魔

「二〇年にわたって、ほぼすべての金融機関のDNAが……危険なものへと変化した」と、当時カリーは『ニューズウィーク』誌に語っている。「誰かがレバレッジ比率を上げて、もっとリスクをとろうと強く主張するたびに、つぎの数年間でその意見が『正しい』と立証された。そう主張した人々は賞賛され、昇進し、発言権を増した。逆に、強気に出ることを躊躇し、警告を発した人は『間違っている』と立証された。彼らは糾弾され、無視されるようになり、発言権を失った。どの金融機関でも、そんなことが日々くりかえされ、ついには、先頭に立つのは特殊な種類の人ばかりになった」

 

カリーはハーバード・ビジネススクール卒で、パームビーチ生まれのデザイナーである妻のセレリー・ケンブルとともに、ニューヨークの政界と社交界の有名人だ。いうなれば、彼こそ「とても積極的な」人々の一員のはずだが、思いがけないことに、内向型の重要性を訴えるひとりでもあった。世界的な金融危機をもたらしたのは押しの強い外向型だというのが、彼の持論だ。

「特定の性格を持つ人々が資本や組織や権力を握った。そして、生まれつき用心深く内向的で物事を統計的に考える人々は正しく評価されず、片隅に追いやられたのだ」と彼は語った。

不正経理や粉飾決算を重ねたあげく、二〇〇一年に倒産した悪名高い〈エンロン〉のリスク管理担当役員をつとめていた、ライス大学ビジネススクールのヴィンセント・カミンスキー教授も、『ワシントン・ポスト』紙にアグレッシブなリスクテイカーたちが用心深い内向型よりもはるかに高い地位にいた企業内風土について、似たような話を語った。穏やかな口調で言葉を選んで語るカミンスキーは、エンロン・スキャンダルに登場する数少ないヒーローのひとりだ。彼は、会社が存続の危機にさらされるような危険な状態にあると上層部にくりかえし警告を試みた。上層部が聞く耳を持たないとわかると、カミンスキーは危険な業務処理を決裁するのを拒み、自分のチームにも働かないように指示した。すると会社は彼の権限を奪った。

「ヴィンス、きみが書類を決裁してくれないとあちこちから苦情が来ているぞ。まるで警官みたいなことをしているそうじゃないか。うちには警察なんかいらないぞ」エンロンのスキャンダルを描いたカート・アイヘンワルドの『愚か者の陰謀』(Conspiracy of Fools)によれば、社長がカミンスキーにそう言った。

だが、彼らは警察を必要としていたし、それは現在も同じだ。二〇〇七年に信用危機がウォール街の大銀行を存亡の危機にさらしたとき、あちこちで同じようなことが起きたのをカミンスキーは見た。「エンロンに取りついた悪魔たちはまだ追い払われていない」と、彼はその年の一一月に『ワシントン・ポスト』紙に語った。多くの人々が銀行の抱えているリスクを理解していないことだけが問題なのではない、と彼は説明した。現実を理解している人々がそれを無視しつづけていることもまた問題なのだ――その理由のひとつは間違った性格タイプを持っているからだ。

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/