2021.03.02
# 株式投資

他人が株で儲かっていると居ても立っても居られなくなる人たちへ

内向型のほうが株暴落に強い理由(1)
スーザン・ケイン プロフィール

ブレーキを踏むべきときにアクセルを踏む

報酬に対する感度が過敏な人は、宝くじを買うとか、友人と夜ごと出かけて楽しむとか、さまざまな報酬を得ようと夢中になってしまう。報酬に対する感度は、セックスや金銭や社会的地位や影響力といった目標を達成しようと私たちを駆りたてる。階段をのぼって、高い枝に手を伸ばし、人生の最高の果実を獲得しろとハッパをかける。

 

だが、時として、報酬に対して過敏になってしまう人がいる。暴走した過敏性は、ありとあらゆるトラブルをもたらす。たとえば、株売買で大金を手に入れられるだろうと期待して興奮するあまりに、大きすぎるリスクを冒して、明白な警告信号を無視してしまうのだ。

警告信号はたくさんあったのに、大金を手に入れられると期待するあまり興奮していたアランには、それがまったく見えなかった。報酬に対する感度が平静さを失ったときの典型的なパターンに陥っていたのだ。速度を落としなさいという警告信号を受けたのに、かえって速度を上げてしまった――投機的な株取引にのめり込んでかけがえのない財産を捨ててしまったのだ。

経済界の歴史には、ブレーキを踏むべきときにアクセルを踏んでしまった例がたくさんある。行動経済学者たちは、企業買収の際に競争相手に勝とうと夢中になるあまり、法外な大金を投じてしまう経営者たちをたくさん見てきた。そうした事例はあまりにも多く、「ディール・フィーバー」という言葉があるほどで、それには「勝利者の呪い」がつきものだ。その典型的な例が、合併後の新会社が驚異的な赤字を出し、「世紀の失敗合併」と呼ばれたタイム・ワーナーとAOLの合併だ。AOLの株価は大幅に過大評価されているという警告がたくさんあったにもかかわらず、タイム・ワーナーの重役陣は満場一致で合併を承認した。

「合併話をまとめたとき、私は四二年ほど前にはじめて女性と愛を交わしたとき以上に興奮し、夢中になっていた」というのは、重役陣のひとりであり、最大の個人株主でもあるテッド・ターナーの発言だ。合併が合意に達した翌日の『ニューヨーク・ポスト』紙には、「テッド・ターナーいわく、セックスよりも最高」と見出しが躍った。頭のいい人間が、なぜ時として報酬過敏になるのかを考えさせられる事例だ。

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