第2次大戦中の日本は、なぜもっと早く降伏しなかったのか?

ソ連のスパイに騙されたノイマン
高橋 昌一郎 プロフィール

明日爆撃するなら、なぜ今日ではないのか

当時のソ連は、アメリカ・イギリス・フランスの度重なる要求を無視して、ドイツ占領中のソ連軍を撤退させなかった。1949年、ドイツは東ドイツと西ドイツという2つの「分断国家」に引き裂かれ、首都ベルリンも東西に分割された。その後、西側への市民の流出を防ぐために東側が張り巡らせた「ベルリンの壁」は、「東西冷戦」の象徴となった。

ベルリンの壁(photo by gettyimages)

1950年6月25日、ドイツと同じように分断された朝鮮半島の北朝鮮が、突然、韓国に侵攻し、朝鮮戦争が勃発した。その背後に存在するのは、もちろんアメリカとソ連の二大強国である。朝鮮戦争は第三次世界大戦に繫がり、ひいては核戦争が勃発するのではないかと、世界は震撼した。

 

ちょうどこの時期に、ジャーナリストのクレイ・ブレアがノイマンにインタビューした貴重な記事がある。

ノイマンは、ラッセルとまったく同じ論法で「一刻も早く世界政府を樹立すべきですが、ソ連の共産主義が世界の半分を支配している限り、それは不可能です。したがって、予防戦争をすることは理にかなっているのです」と冷静に答えている。

さらにノイマンは、「ソ連を攻撃すべきか否かは、もはや問題ではありません。問題は、いつ攻撃するか、ということです」と主張し、「明日爆撃すると言うなら、なぜ今日ではないのかと私は言いたい! 今日の5時に攻撃すると言うなら、なぜ1時にしないのかと私は言いたい!」と述べたという。

このインタビュー記事によって、ノイマンは「マッド・サイエンティスト」の代表とみなされるようになった。スタンリー・キューブリック監督の風刺映画『博士の異常な愛情』は、この発言のノイマンをモデルに「ストレンジラブ博士」を生み出したわけである。

知られざるフックス事件

1948年、ノイマンの生まれ故郷ハンガリーでは、共産党を母体とするハンガリー勤労者党が一党独裁政権を樹立した。

最高権力者になったのは、スターリンを崇拝するマーチャーシュ・ラーコシ共産党書記長である。その翌年には、ソ連が主導する「経済相互援助会議(COMECON)」に加盟し、ハンガリーは完全にソ連の「属国」になってしまった。

この状況が、ノイマンのソ連に対する「憎悪」に繫がったと書いてあるノイマンの伝記や解説書が多いのだが、実はそれよりも遥かに重大な理由があったと考えられる。

1949年8月、ソ連がセミパラチンスク核実験場で、核実験に成功したというニュースが、世界を驚愕させた。なぜアメリカの軍部の予想より10年も早く成功できたのか。

実は、ソ連は、何も「マンハッタン計画」と同じようにゼロから原爆を開発する必要はなく、その出来上がりの情報だけを入手すればよかったからである。

1950年1月27日、アメリカの原爆情報をソ連に流していた物理学者クラウス・フックスが、イギリスで逮捕された。この時点で、彼は、イギリスの原子力開発を極秘任務とするハーウェル原子力研究所所長にまで昇りつめていた。

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