誰もが「女らしさ」「男らしさ」を兼ね備えている

本作はミスコンを通じて「女らしさとはなにか」を問いかけるが、ミスコンのファイナリストたちは非常に個性的で多様だ。これは監督の意図的な設定だったのだとか。例えば、コルシカ代表の女性はがさつな武道の達人で、伝統的な“女らしさ”からはほど遠い。こういった多様な女性を登場させることによって、この映画は「女らしさ」の答えがひとつではないことを主張する。

『MISS ミス・フランスになりたい!』より
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では、アウヴェス監督は「女らしさ」や「男らしさ」をどのように考えているのか。

女らしさ、男らしさ、女性とは何か、男性とは何か、これは言葉にしないでおくべきだと思います。そういったことを女優や俳優たちとも話し合ったのですが、結局最後には、『私達には分からない』という答えに落ち着きました」と監督。

「でもね……」と監督は続ける。「ローラ役のティボール・ド・モンタレンベールが面白いことを言っていたんです。私達の誰もが女性性と男性性の両方を有すると。そして、それはエネルギーの揺れ方の違いだ、と彼は言うんです」

左がローラ役のティボール・ド・モンタレンベール/『MISS ミス・フランスになりたい!』より

アレックスを支えるトランスジェンダーの女性ローラ役は男性の俳優、ティボール・ド・モンタレンベールが演じた。彼は役作りに2ヶ月かけて、どんな人間にも女性性と男性性の両方があると改めて認識した。彼曰く、女性性や男性性というのはある種の“エネルギーの揺れ”で、その揺れが女性性のときは水平に、男性性のときは垂直に揺れるという。

あくまで筆者の主観だが、それは“感情の波”のようなものかもしれない。一日のうち、私達は様々な感情の波に襲われる。さざ波のように静かに広がる感情もあれば、一瞬の高い荒波のようなものもある。そういった人間のもつ感情のなかでも、例えば“寛容や優しさ”は「女らしさ」、“達成欲や実行力”は「男らしさ」といったように、社会がジェンダー規範をつくってきたのではないだろうか。そういうふうに考えると、私達の誰もが、いわゆる「女らしい」エネルギーと「男らしい」エネルギーの両方を兼ね備えていると言えるだろう。