女性性を表現しても、女性になりたいわけじゃない

監督に影響を与えたアレクサンドル・ヴェテールとは、一体どんな人物なのだろう? 「ジェンダーレス」「ユニセックス」「ノンバイナリー(自身を男性、あるいは女性という二元論で捉えていないか、もしくはその両方であると捉えている人々)」などと呼ばれる彼は、女性服も男性服も身につけるモデルだ。

今年4月に36歳を迎えるアレクサンドル・ヴェテールは、2016年のジャン・ポール=ゴルチエの“レディース”コレクションに出場して世界中から脚光を浴び、その後は、Netflixオリジナルドラマ『エミリー、パリへ行く』やAmazonプライムドラマ『マーベラス・ミセス・メイゼル』に出演し、俳優としても高い評価を得た。そんなアレクサンドルと出会ったとき、アウヴェス監督は「女性としての自分をどう表現したいのか」「将来的に性転換を考えているかどうか」と尋ねたという。

『MISS ミス・フランスになりたい!』より
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アレクサンドルは、自分のなかの女性性を強く感じているから表現したいだけで、女性になりたいわけではない、と答えたという。彼は子供の頃から女装をすることに喜びを感じており、それが寛容に許されるモデルという職業を選んだのだった。女性にも男性にもなれるモデル兼俳優……彼はどのような表現を目指しているのだろうか。また、「ジェンダーレス」「ユニセックス」「ノンバイナリー」という呼び名が常についてくることを彼はどう捉えているのか、監督に聞いてみた。

「アレックスは発達した女性性をもった男性。モデルや演技で自分の女性性と男性性の両方を表現する。重要なのは、彼は映画のアレックスと同じように、自分自身を言葉でカテゴライズされたくないということなんです。それでもあえて選ぶならば、ジェンダー・フルイドという言葉でしょうね」

「ジェンダー・フルイド」とは、自身のアイデンティティや性表現を固定していない、もしくは、男性と女性の両方を含むと認識している人々を表す言葉だ。数年前にジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの娘、リリー=ローズ・デップが自身を表現する言葉として使ったことが話題となったのを覚えている人もいるだろう。