近年、女性の美を審査するミスコンは、ルッキズム(外見至上主義)、性差別、性の商品化などの観点などから批判されている。世界の多くのミスコンが水着審査を廃止したり、審査部門に社会課題を置くようになったり、非白人、同性愛者、トランスジェンダー、障がい者などの様々なマイノリティがグランプリをとるようになってきた。

こうした状況を背景に誕生したのが、2月26日より公開中のフランス映画『MISS ミス・フランスになりたい!』。若い男性がミス・フランスに挑戦するという破天荒な物語だ。

主人公の男性はミスコンに出場するからといって、女性になりたいわけではない。この設定に込められた意味は何なのか。本作の共同脚本を手掛け、監督も務めたルーベン・アウヴェス氏に聞いた。

ルーベン・アウヴェス監督

女装する男性は全員トランスジェンダーではない

子供の頃からミス・フランスになるのが夢だった若い男性アレックス(アレクサンドル・ヴェテール)。ボクシングジムで雑用係として働く彼は、自分のすべてに自信がもてず腐る日々を送っていた。ある日、ボクシングチャンピオンになるという夢を叶えた幼馴染のエリアス(クエンティン・フォーレ)と再会し、ミス・フランスになるという夢に挑戦することを決意する。

下宿屋の女将ヨランダ(イザベル・ナンティ)や性自認が女性であるトランスジェンダーのローラ(ティボール・ド・モンタレンベール)の助けを借りて、美しい女性に変身したアレックスは自分の性別を隠して応募し、見事ファイナリストに残るのだが……。

『MISS ミス・フランスになりたい!』より
-AD-

くるくるとした大きな瞳にくしゃくしゃの髪……どこかいたずらっ子な印象を与えるルーベン・アウヴェス監督。俳優としても活躍する彼は理路整然とした口調とは裏腹に、目が合うたびにこぼれるような笑顔をみせる非常にチャーミングな人物だ。

17歳以来、性別が男性で性自認が女性である幼馴染が性転換を行い、そのプロセスをずっと支えてきたという監督。その経験をいつか映画化したいと長年望んでいたが、女性・男性両方のモデルとして活動をするアレクサンドル・ヴェテールと出会い、彼が男性から女性へ自然に変貌していく様子に感銘を受けて彼を主役に脚本を書いたという。

『MISS ミス・フランスになりたい!』より

アレクサンドルにインスパイアされて、主人公を女性になりたいトランスジェンダーではなく、“ミス・フランスになりたい男の子”という設定にした理由を監督はこう説明する。

人生において自分の性別を変えるということは非常に勇気がいる。だからトランスジェンダーのアイデンティティをずっと描きたいと思っていましたが、アレクサンドルとの出会いで、“自分らしさ”を引き受ける勇気もそれと同じ勇気じゃないかな、と思ったんです」(ルーベン・アウヴェス監督、以下同)

本作は一見、トランスジェンダーが男性という性別を隠してミスコンに応募し、勝ち抜いていくサクセスストーリーのようだが、実はジェンダー規範とアイデンティティに葛藤する若者の成長を描いた物語なのである。