ゼロ・ウェイストの誕生

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僕が推進する「ゼロ・ウェイスト料理」は、なんと約800年前に日本の仏教僧院で見出されていた。禅僧で詩人の道元は、世界初のゼロ・ウェイスト・マニフェスト『典座教訓』を書いた。この伝説のエッセイには、野菜の皮を含むすべてを使うよう書かれている。自分の目のように大切に材料を扱うべきだと。もったいないの精神をこれほどまで詩的に表現した人を僕は知らない。このマインドフルネスの精神は、現代の日本でも生きている。映画のために東京の緑泉寺を訪ねた際、住職であり料理人の青江覚峰さんに会い、日本の菜食寺院料理である精進料理の秘密を教わった。彼は僕に目隠しをしていろんな料理を味わわせてくれた。特においしかったのは、柔らかく調理された茄子のへただった。通常なら捨てられてしまう部分である。精進料理の哲学はシンプルで見事だ。それはすべて内面的な姿勢に関わっている。心を込めて丁寧に料理を作り、大切な人と分かち合うことで、食べものへの感謝が身に付く。

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食べ物は人生(そして愛)

もったいないの精神は日本の精神性に根ざしているのだと思う。神道の信念によれば、この世界の現象すべてに魂がある。食べものは僕たちにビタミンなどの栄養素を提供するエネルギー源であるだけでなく、食べものは生きることそのものを表している。ご飯を捨てるということは、命を無駄にすることになる。この観点から見ると、日本人にとって料理のルーツに帰ることは簡単なことだと思うはずだ。多くの伝統的な料理文化に見られる「ゼロ・ウェイストDNA」は、日本では特に強いからだ

映画の旅からだけでなく、個人的にもそれを実感している。2017年に初めて日本に来たとき、福岡での料理イベントで、若いコミュニティワーカーの梯愛依子さんに会った。彼女は残ったご飯でおにぎりを作っていた。彼女に一目ぼれし、数ヵ月後に僕たちは結婚した。それ以来、僕にとって「おにぎり」はゼロ・ウェイストだけでなく、愛の象徴となったのだった。

<PROFILE>
ダーヴィド・グロス

1978年オーストリア生まれ。ジャーナリスト・ドキュメンタリー映画監督として活動する中、2015年映画『0円キッチン』を監督。2020年には日本を舞台にした『もったいないキッチン』を手がけ大きな反響を呼ぶ。現在も各地で公開中。
www.mottainai-kitchen.net


●情報は、FRaU2021年1月号発売時点のものです。
Translation:Akiko Frid Edit:Chizuru Atsuta

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