2020年、日本のフードロス問題にスポットを当てた映画『もったいないキッチン』のダーヴィド・グロス監督。彼が日本を旅して肌で感じた思いを寄稿してもらいました。

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この数字は僕にかなりのショックを与えた。日本では平均して毎日一人につきご飯茶碗1杯分の食べものが捨てられているという。毎日1億2600万個のおにぎりが捨てられていることになる。僕の映画『もったいないキッチン』の冒頭に出てくる食品ロス問題の専門家、井出留美さんから聞いた数字だ。彼女と僕は神奈川県の食品リサイクルセンターにごみとして集められたおにぎりの山の前に立ち尽くした。まだ十分食べられるおにぎりばかりだ。

フードアクティビストとして僕は自分に問いかけた。「日本が世界最大の食品浪費国のひとつだなんてあり得るのだろうか?」「伝統的にも食べものへの敬意が深いこの国が!?」 そして重要なことは、「僕たちは何ができるのだろうか?」ということだった。僕は映画の中でこれらの問いの答えを追求しようと、日本中を4週間かけて巡り、1600キロの旅をした。「もったいない」という、翻訳することが難しく世界でも珍しいこの言葉のより深い意味を探るために。もったいないの概念は「無駄」を意味するが、創造的な解決策も意味するのだと理解した。

解決策に焦点を当てる

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日本で食品ロスが多いのにはたくさんの理由がある。加工食品の大量生産、厳密な賞味期限、視覚的な完璧さへの欲求、そして重要なのが現代のライフスタイルだ。廃棄物の削減に貢献できるライフスタイルの側面は、特に注目に値するだろう。現代の都会的なライフスタイルは、食事を共にする時間を減少させ、手軽でコンビニエントな食に依存し、根本的に食料源とのつながりを失っている。

日本で食品ロスを含む食品廃棄物を減らすための秘訣は何かと聞かれたら、「ルーツに帰ること!」と僕は言うだろう。 それはさまざまな意味を含んでいる。

ルーツに帰る

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僕は祖父母世代が持つ貴重な知識を再発見する必要があると思っている。映画の旅の一環として、京都府綾部市の若杉友子さんと出会った。僕には森と牧草地にしか見えなかった場所で、野草に詳しい彼女は食べものを見つけた。誰も名前を知らないだろう野生植物で82歳の彼女はおいしい天ぷらを揚げてくれた。若杉ばあちゃんは食べものの長期保存法もたくさん知っている。ファストフードにとても懐疑的で、自分のまわりにある自然からの恵みで生きることを好み、健康を楽しんでいる。

若杉ばあちゃんの視点から見ると伝統的な和食は「ゼロ・ウェイスト料理」であり、「無駄にしない」哲学はいわば日本人のDNAの一部である。和食は母国語のようなもので、とても落ち着けるのだと彼女は言う。若杉ばあちゃんは、第二次世界大戦を体験したオーストリアの祖母を思い出させる。食べものを無駄にすることは祖母にとってはタブーだった。今では簡単に捨てられてしまうような古くなったパンで祖母はよくおいしいお団子を作ってくれた。僕がフードアクティビストになったきっかけとなったのは、祖母の残りもの料理の芸術から受けた影響によるものだろう