7つのマッチングアプリを同時進行する男

「アプリを初めてインストールしたのは1年くらい前、元彼と別れて傷心の頃でした。それまではアプリなんて怖いと思ってたくらいですが、意外に“出会える”と思ったのは確かです」

去年はじめて緊急事態宣言が出された頃、玲美の生活は孤独を極めていた。

そろそろ結婚……と期待していた恋人と破局してしまい、仕事は完全にリモート化、気分転換に外食に行くこともできない異様な日々が続いた。福岡の実家に帰ることもできず、24時間一人きりで過ごすのはとても辛かったそうだ。

「アプリには恐る恐る登録しましたが、たった数時間で“いいね”がたくさん届いてメッセージのやりとりがスタートしたときはホッとしました。あのときは、定期的に連絡をくれる男性がいるだけで不安が和らいだんです」

けれど都内の飲食店や商業施設のほとんどが営業停止する中、アプリでマッチングしたとはいえ、現実世界でデートをすることはできない。

そんな状況でもZoomデートにチャレンジしたり、玲美は試行錯誤しながらオンラインの出会いに慣れていった。

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Netflix、Amazonプライム、huluのドラマすべてを全制覇しそうなほど時間を持て余す中で、たとえネット上であっても、自分に興味を持ってくれる彼らの存在は救いだったのだ。

「その中でも一番気が合ったのがアキラくんです。外資系メーカー勤務のマーケターで出自は申し分ないし、顔もタイプで。ほら、この人」

玲美はスマホ画面を差し出しす。

そこには『Akira 30歳』のプロフィールが表示されており、なるほど彼はジャニーズ系の甘い顔立ちしていた。自己紹介文も適度な長さで好印象だ。

そう伝えると、彼女は再び眉をひそめる。

「でしょう? 私も初めはそう思いましたよ。メッセージのテンポも良いし、実際に会う前に何度も電話でも話したし、会話も楽しくて2時間近く長電話した夜もあったくらい。でも、見てくださいよ」

すると玲美は再びスマホをタップし、別の画面を次々と表示した。フレンチネイルを施した細い指先がスライドするたびに違ったマッチングアプリの『Akira 30歳』のプロフィールが現れる。

「彼、アプリを7つも同時進行してたんです。それも私が調べた限りなので実際はもっと多かったかもしれません。やっと素敵な人と出会えたと思ったのに……彼、ただの“アプリ依存男”だったんです」