語り合いたくなる映画である。ドキッとしたり、ギクっとしたり、ヒヤッとしたり、スカッとしたり。門脇麦さん演じる東京の上流階級に生まれ育った箱入り娘・華子と、水原希子さん演じる、地方出身で猛勉強して入った名門大学を家庭の事情で中退することになる美紀。真逆の境遇に生きる2人が、一人の男性を通して接点を持ち、ふとしたきっかけで心を通わせ合う。

『あのこは貴族』より

主人公である華子が、美紀との出会いによって自分の道を歩み始める。その成長の仕方がとても切実だ。映画『あのこは貴族』は、世界中が価値観の変化を迫られているこの時代に、よりよい明日を信じて生きる、すべての女性に向けた応援歌になっている。

あのこは貴族
『アズミ・ハルコは行方不明』、(16)『ここは退屈迎えに来て』(18)などが次々と映像化され注目を集める作家・山内マリコの同名小説の映画化。東京という都市には、見えない階層性があり、それぞれの階層の中で懸命に生きてきた女性二人の人生が、ある男性を通して一瞬、交錯する。その邂逅によって、恋愛や結婚だけでないそれぞれの人生を切り開いていく――。監督・脚本は初のオリジナル長編『グッド・ストライプス』で新藤兼人賞金賞を受賞した岨手由貴子。2月26日(金)より全国ロードショー
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「華子を演じるのは難しかった」(門脇)

――麦さん演じる華子は、庶民から見るとちょっと浮世離れしていて、最初は自我を持っていない女性のようにも見えます。上流階級ということで、共感されにくい部分も多いし、演じるのは難しかったのでは?

『あのこは貴族』より

門脇:華子が自分の気持ちに疎いのは、目の前に突きつけられた人生の課題について敢えて考えないようにしていたからだと思います。小さい頃から、「こういうことがやりたい」と主張したところで、ことごとく「ダメ」って言われてしまう。そんな境遇で成長してきたとしたら、自分の感情を麻痺させないと生きていけないのも仕方がないのかな、と。

おっしゃる通り、華子を演じるのは難しかったです。でも、映画を観てくださった方の感想を聞くと、意外と華子目線で見ている方もいて……。どの役もそうですが、華子について理解できるところもあるし、できないところもありました。華子との共通点はすごく少ないですが、東京出身で、東京のことを「自分が生きてきた街、ただの街」って思っている部分は似ていると思います。あと私もとても恵まれた環境で育ったし、華子のような育ちの友人もいます。

ただ、私は割と自分で扉を叩きながら開拓していくことに喜びを覚えるタイプなので、自らレールを踏み外しがち(笑)。そこは美紀にすごく共感します。結論としては、華子の部分も、美紀の部分も両方あるんです、自分の中に。

撮影:山本倫子