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ロダンの彫刻を検証してわかった!「美術解剖学」を知ればリアルな人体が描ける

"伝わる作品"にするにも解剖学が必須
絵や図を描いていく中で、どうしてもぶつかる壁があります。そのひとつが人体。静物や風景など、いわゆる"物(ブツ)"はなんとか形にできるのに、「どうもしっくりしない」「自分の描いた人は薄っぺらい」と感じている人は多いのではないでしょうか。

しばしば、このブルーバックス ・サイトで、ヘタレ図(?)を起こすハメになる編集スタッフAもそのひとり。器具や模型などの物は大丈夫。臓器や細胞もなんとか。でも、人形(ひとがた)は極力避けたい

しかし、人の形には、ちゃんとした理屈があって、それを踏まえれば自然な人の姿かたちを再現できるのだそうです。今回は、ロダンの名作をいわば"検体"にして、「名作は人の形をリアルに表現しているのか?」をイラストレーター の金井裕也さんに検証してもらいました。絵と解剖学、実は密接な関係のあることがわかります!

会わなくても、会えなくても、人は人を目にする

当たり前のことではありますが、今日、私たちは毎日非常に多くの人の顔を目にし、姿に接しています。

いわゆるコロナ禍で、実際に人と会う機会は減ってはいるものの、オンラインでの交流という新たな習慣で、人の容貌や姿は、離れていても、いとも簡単に確認し合えるようになりつつあります。また、メディアからは人がモチーフとなった映像が、大衆にむけて大量に発信されています。

このように、人間観察の機会、すなわち人間という像を見る機会は、どこにいても無限にあり、私たちは、たとえ1人だけの環境にいても、毎日、膨大な量の人の像の洪水の中で暮らしているのです。

【写真】人、ひと、ヒト…… 私たちは無数の人の像に囲まれて暮らしている photo by gettyimages

日々大量に"像"を目にしている今、私たちの観察レベルは非常に高いはずですから、人の形をかたどったり似せたりしようとしているにもかかわらず、あるべき姿やあり方と違う像を見ると、違和感を覚えることになります。

では、違和感を感じさせない、"人の形"とはどういうものなのでしょうか?

人を描くには"ヒトがどうできているか"を知る

人の像を描くには、ヒトの生物学的な特徴を知っておく必要があります。具体的には、姿かたちに影響する構造的な制約と、ポーズや姿勢に影響する動きの制約という、"ルール"があることです。

構造とは、からだは皮膚、筋肉(筋。からだを動かす主要な筋を骨格筋という)、骨(軟骨を含む全身の骨の組み合わせを骨格という)からできており、順に深部へ層をなしていることです。人のフォルム(からだのふくらみやへこみなど)は、そうした構造的な制約のもとに成り立っています。

動きとは、骨格や筋といったパーツどうしの連結である関節の運動をいいます。どれくらい動くか(可動域)やどちら側に動くか(可動方向)などは、関節によって決まっており、その制約から大きく逸脱した動きは不自然となります。

【イラスト】表皮・筋(体表の筋)・骨格からだの形態は、表層から皮膚、筋、骨格で決まる。骨格の骨どうしの連結部が関節で、からだの動きや姿勢を決める

こうした骨や筋のつくりと、関節の動きという2つの制約をクリアした像が、人の形態として違和感なく受け入れられるのです。生体の正常な形態と構造とを研究する学問を解剖学(ヒトが対象ならば「人体解剖学」)といいますが、制約をクリアした像は、「解剖学的に正しい」といえます

では、歴史的にも美術的に名作といわれる人体モチーフが解剖学的に正しいか、ちょっとした検証をしてみたいと思います。もっとも、私は絵描きですから、計測機器で物理的に検証するのではなく、ここは筆の力で迫ってみたいと思います。

ロダンの『青銅時代』は、ロダンが装飾職人をリタイヤしたのち、かつて夢見た創作の道に再び挑戦したころの作品です。「人体から直接型を取った」という伝説が生まれたほど、リアルで立体感のあるブロンズ像で、プロポーションの理想化と解剖学的な正確さを同時に具現化した、卓越した名作です。

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