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福島原発事故「10年目の真実」…「東日本壊滅」という最悪シナリオを回避できた「本当の深層」

NHKメルトダウン取材班 プロフィール

10年目の「真実」

あの事故で死を覚悟した時はあったのか。

この10年、事故対応にあたった幾人もの当事者にそう尋ねてきた。ほぼ例外なく「死ぬと思った」という答えが返ってきた。とりわけ事故4日目の3月14日、2号機が危機に陥った時「もう生きて帰れないと思った」と語る人が多かった。家族に宛てて書いたという遺書を見せてくれた人もいた。

このとき、冷却が途絶えた2号機は、何度試みてもベントができなくなり、なんとか原子炉を減圧したが、消防車の燃料切れで水を入れることができず、原子炉が空焚き状態になった。テレビ会議では、吉田所長や武藤副社長が血相をかえて「格納容器がぶっ壊れる」「とにかく水をいれろ」と怒鳴っている。

後に吉田所長は、「このまま水が入らないと核燃料が格納容器を突き破り、あたり一面に放射性物質がまき散らされ、東日本一帯が壊滅すると思った」と打ち明けている。吉田所長が語った「東日本壊滅」は、事故後、専門家によってシミュレーションが行われている。当時の菅総理大臣が近藤駿介原子力委員会委員長に事故が連鎖的に悪化すると最終的にどうなるかシミュレーションをしてほしいと依頼して作成された「最悪シナリオ」である。

そこに描かれていたのは、戦慄すべき日本の姿だった。

近藤駿介原子力委員会委員長に事故が連鎖的に悪化した場合の「最悪シナリオ」をシミュレーションした資料
最悪の場合、福島第一原発事故から半径170キロメートルが強制移転の領域に、250キロメートルが希望者住民が移住を希望した場合には認めるべき汚染地域になると予測していた
 

最悪シナリオによると、もし1号機の原子炉か格納容器が水素爆発して、作業員が全員退避すると、原子炉への注水ができなくなり、格納容器が破損。2号機、3号機、さらに4号機の燃料プールの注水も連鎖してできなくなり、各号機の格納容器が破損。さらに燃料プールの核燃料もメルトダウンし、大量の放射性物質が放出される。

その結果、福島第一原発の半径170キロメートル圏内がチェルノブイリ事故の強制移住基準に達し、半径250キロメートル圏内が、住民が移住を希望した場合には認めるべき汚染地域になるとされている。半径250キロメートルとは、北は岩手県盛岡市、南は横浜市に至る。東京を含む東日本3000万人が退避を強いられ、これらの地域が自然放射線レベルに戻るには、数十年かかると予測されていた。

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