上白石萌音の『オー!マイ・ボス!』、『恋つづ』との「決定的な違い」に気づいていますか?

堀井 憲一郎 プロフィール

でも、母と娘が住んでいるのは「タワーマンション」の高そうな部屋である。

かつて恋愛小説家として、母は売れていたらしい。

そしてそのマンションは「夢見る40歳女子」が好むような部屋になっていて、何だかふわふわしている。たとえば、寝室のベッド周りは雲になっていて、雲の上で寝ているような設えになっているのだ。

「恋愛小説家」という存在そのものを、ふわりとした存在に描いている。

しばしば彼女は近所の「鯛焼き屋の居間のこたつ」にもぐりこんでゴロゴロする。

この「下町ホームコメディ」という味わいが、ドラマの基本トーンになっているとおもう。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

「女子大生のおたく生活」もリアルに描かれ、彼女はおたく仲間(岡田健史)に「ジャンプの連載を勝ち取ろうぜ」と誘われて、漫画を描こうとしている。ちょっと漫画『バクマン。』ぽくて、これはこれで惹きつけられる。

ピークをすぎた恋愛小説家の母は、次回作をどうしようかと悩む姿がなかなかリアルである。ミステリーを書いて評判は芳しくなく、どうやら違う分野の作品に挑もうとしている。

母も娘もともに、創作に励んでいる。

「下町テイスト」に「創作の母娘」が描かれそこに「コメディタッチの恋愛」が加わっているドラマだ。

個々の素材がとてもおもしろい。

それゆえに全体がどう動こうとしているのか、どこに焦点を合わせて楽しめばいいのか、ちょっとわかりにくい。

つまり、誰の何を応援すればいいのか、つかめない。

「下町テイスト」の線でいけば、鯛焼きを作っている独身男(沢村一樹)と、幼なじみの主人公(菅野美穂)のあいだを応援するのがもっともな筋なのだろうが、どうもそこだけを強く盛り上げようというわけではないようだ。

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