軍の独裁者は鬼…在日ミャンマー人が訴えた「母国の軍政」への怒り

これは天安門事件のミニチュア版なのか
近藤 大介 プロフィール

ミャンマー憲法の緊急事態条項に驚愕

先頭を切ったのは、日本で人材派遣業の会社に勤めているというモンさんだった。

「2月1日に国軍が起こしたクーデターは、完全に憲法違反です。2008年に国軍が定めた憲法に、自らが違反しているのです。国軍の司令官が大統領的な権限を持つことは許されていないし、緊急事態宣言が出ても大統領は職務停止にならないからです」

彼女は、ミャンマー憲法の第73条と第418条を、ミャンマー語の原語と、日本語訳で指し示した。日本語訳は、以下の通りである。

〈 第73条(1)大統領が任期終了前に辞職した場合であれ、死亡した場合であれ、また職務を継続的に遂行できなくなった場合であれ、何らかの理由により大統領に空席ができた場合には、2名の副大統領のうち、大統領選挙の際に2番目に票が多かった方が、大統領代行として、任務を遂行しなければならない 〉

〈 第418条(1)大統領は、第417条に定めた国家緊急事態を宣言する際、国軍司令官が国内の穏やかな原状回復に向けた必要な措置を取れるよう、立法・行政・司法の各権限を国軍司令官に委譲する旨、宣言しなければならない。その宣言がなされた日をもって、すべての議会は立法機能を停止し、自動的に解散したものとみなす。

(2)憲法に基づいて、議会の承認を得た上で、任命された組織及び自治区・地域の指導組織に所属するすべての関係者は、大統領及び副大統領を除き、国権が国軍司令官に委譲された日をもって、職務が停止されたものとみなす 〉

ミャンマー憲法に接したのも、この時が初めてだったが、二つのことが驚きだった。
まず第一に、緊急事態条項が事細かに定められている点である。

たしかに、前述の『物語ビルマの歴史』を読むと、この国は過去2000年にわたって、ものすごい闘争史を繰り広げてきたことが分かる。何せ、東の中国と2160km、西のインドと1463kmも国境を接しているのだ。この東西両大国の他にも、19世紀にはイギリスと3度の戦争の末に植民地化されたり、前世紀の太平洋戦争中は日本軍に占領されたりしている。

 

もう一つの驚きは、「憲法第418条」という点だ。調べてみたら、ミャンマー憲法は457条まであった!

憲法が短いほど平和国家というわけでもないが、緊急事態宣言など、「万一の事態」までくどくどと書くから長くなるわけだ。103条しかない日本の平和憲法のありがたみが沸いてくる。

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