PS5でも話題!人の触覚を惑わせる奥深い「振動」の世界

震える薄膜を実現したMEMSとは何か
西田 宗千佳, ブルーバックス編集部 プロフィール

第三の方法

竹下さんは、「とはいえ、これらには共通の課題がある」と指摘する。その課題とは、「質量のあるものを動かしているので、形に制約があること」(竹下さん)だ。

【写真】竹下さん竹下俊弘さん

振動させるためには「重り」が不可欠だ。大きい振動が必要なら、それだけ大きな重りが必要になる。重りも、それを動かすしくみも、固く、質量の大きなデバイスにならざるを得ない。そのような重りを入れるデバイスの側に、形やサイズの制約が生じるわけだ。

「振動を生み出す」ための、さらに別の方法もある。──「圧電式」といわれるものだ。

ポータブルラジオなどでは、薄い金属の円盤がスピーカー代わりに使われている場合がある。これが「圧電スピーカー」だ。高い電圧をかけることで板が震え、その振動が音になるのだが、音ではなく直接、振動を生み出すことに使えば、そのまま「振動を伝えるデバイス」になる。圧電式はきわめて薄く作製できることに利点があるが、一方で、硬いために曲げることが難しいというデメリットもある。

【表】各デバイスの特徴各デバイスの特徴

「貼る」振動デバイス!?

そこで出てくるのが、竹下さんたちの開発した「フィルム状振動デバイス」である。

フィルム状振動デバイスは、その名のとおり、フィルムの形になった振動デバイスだ。7〜7.26ミクロンという、非常に薄い膜状のデバイス(これがなにかは、後ほどタネ明かししよう)を樹脂のフィルムに封入した形なので、ある程度自由に曲げることができる。他の振動デバイスよりずっと軽いのも特徴の1つだ。

【写真】フィルム状になったデバイスフィルム状になったデバイス。自由に曲げることができる

「曲げられるということは、曲面に貼りつけることもできる、ということです」

竹下さんはそう説明する。

曲げたり曲面に貼りつけたりできることには、どういうメリットがあるのだろうか? 「簡単にいえば、『振動の与え方』を大きく変えることができるんです」(竹下さん)

従来の振動デバイス、特に偏心モーターやリニア共振アクチュエータは、大きな重りを動かして振動を生み出すため、そのぶん大きな振動が生まれるものの、手のひらに密着させることは不可能だった。

「結果的に他のデバイスでは、握っている機器自体を震わせることで、手に振動を伝えています」と竹下さんはいう。このやり方では、振動の強弱は伝えることはできても、「手のどこか1点だけに振動を鋭く伝える」のは難しい。また、振動デバイスから生まれた振動は、機器のボディや内部の空気を介して伝えられるため、本来もっている強さより減衰してしまうという欠点もある。

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