テスラは大手自動車メーカーに売り飛ばされるかもしれなかった

テスラモーターズという革命(4)
アシュリー・バンズ プロフィール

燃え尽きてしまう人も

多くの社員は技術面の課題克服を半ばゲーム感覚で楽しんでいたが、燃え尽きてしまう者も見られた。たとえば、創業者を除けばもっとも古株の社員だったイアン・ライトは、大衆向けの電気自動車など、結局は無理だと考えてテスラを去り、電気自動車の中でも配送トラックを専門に手がけるメーカーを自分で立ち上げてしまった。

 

バーディチェフスキーも若き天才エンジニアとして社内で重要な役割を果たしたが、やはりテスラを離れ、電気自動車向けの革命的な新型バッテリーの開発をめざすベンチャーを起こした。創業者の1人、ターペニングは、エバーハードなき後のテスラが面白くなくなったと感じていた。こうした古参社員のテスラ離れが続いたが、何とか持ちこたえた。すでに強力なブランド力を持っていたため、大手自動車メーカーからもトップクラスの優秀な人材を確保できるまでになっていたからだ。

だが、テスラの最大の問題は、技術やマーケティングの工夫でなんとかなるようなレベルではなかった。2008年を間近に控え、資金が底をつきそうだったのだ。

ロードスターの開発に1億4000万ドルかかっている。2004年当初の事業計画では2500万ドルと見積もっていたから大幅な予算超過である。普通なら増資を重ねて乗り切っていただろうが、当時は普通の状況ではなかった。

マスクが当時を回想する。「考えてもみてほしい。一般投資家が電気自動車メーカーへの投資に納得してくれると思うかい? どの新聞を読んでもあの会社はダメだとか、不景気で誰もクルマは買わないとか、当時はそんな記事ばかり書いてあったよ」

マスクがこの四面楚歌の状況からテスラを救うには、全財産を失い、精神的に崩壊するくらいの覚悟が必要だったのだ。(翻訳 斎藤栄一郎)

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