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9万ドルの車に富裕層殺到!イーロン・マスクが自動車業界の脅威となった日

テスラモーターズという革命(2)
気候変動への認識の変化が自動車産業界を大きく変え、電気自動車の開発にトップ企業がしのぎを削るようになった。火付け役にして先頭ランナーはもちろん、イーロン・マスクが率いるテスラモーターズだ。2人の起業家が「テスラモーターズ」を立ち上げ、イーロン・マスクが出資したのが2003年。株式時価総額が世界7位になった今からは信じられないことだが、創業当初、テスラの事業計画は周囲から一笑に付されていた。しかし創業者には気候変動を何とか止めたいという強い信念があった。どんな思いと先見性が世界市場を開拓したのだろうか。創業前から最初の試作車「ロードスター」完成までの「100%の電気自動車」誕生史を、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」2016年グランプリを受賞した『イーロン・マスク 未来を創る男』第7章「100%の電気自動車」から4回にわたってご紹介しよう。

信念を持ったエンジェル投資家が必要だ

エバーハードとターペニングの頭の中には、最初からイーロン・マスクの名前が浮かんでいた。数年前にスタンフォード大学で開催された火星協会の会合で、スピーチをするマスクの姿を覚えていたからだ。宇宙にマウスを送り込むビジョンを披露していた変わり者のあの男ならば、きっと電気自動車のアイデアにも耳を傾けてくれると考えた。また、ACプロパルジョンのトム・ゲージからエバーハードに電話があり、マスクが電気自動車分野で投資先を探していると聞かされたため、彼らはマスクへの売り込みを決意する。

さっそくエバーハードとライトがロサンゼルスに飛び、マスクに会ったのが金曜日。その週末には、出張先にいたターペニングにマスクから財務モデルに関する質問が山のように寄せられていた。

「答えても答えても、質問が止まらないんです。月曜日には改めてマーティン(エバーハード)とマスクに会いに行きました。その結果、マスクが『OKだ、乗った』と快諾してくれました」

テスラ創業メンバーは、理想的な投資家に巡り合えたと手応えを感じた。技術に精通していて、自分たちが何を作ろうとしているのかを的確に理解してくれたからだ。また、石油一辺倒になっている米国の現状を変えたいという大きなゴールにも共感してくれた。

 

「なんらかの信念を持ったエンジェル投資家が必要ですね。マスクにとっては単なる投資ではなかったんです。この国のエネルギー構造を変えたいと言っていました」(ターペニング)

マスクは650万ドルを出し、筆頭株主になると同時に、会長の座を確保した。後にこのマスクによる支配の構図が、エバーハードとの権力争いに発展する。

「あれは間違いでした。あのときはもっと投資家を増やしたかったんですよ。でも、もしまた資金集めが必要な状況に出くわしたら、きっとマスクを頼ったんじゃないですか。結局、明日の百より今日の五十ということですから」とエバーハードは振り返る。

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