10年で株価160倍!「頭がおかしい」アイデアにイーロンは賭けた

テスラモーターズという革命(1)
アシュリー・バンズ プロフィール

「イーロンは一発で気に入ってくれた」

お膳立てをしたのは、ハロルド・ローゼンだった。スペースX本社に近いシーフードレストランでマスクとランチをともにしながら、まずは電気飛行機のアイデアを持ち出してみた。だが、マスクは食いつかない。そこで、ついでのプロジェクトだった電気自動車のアイデアも披露してみた。すると、マスクは乗り出すように話を聞き始めたのだった。

 

マスク自身、電気自動車についてはずっと考えていた。マスクの構想は電源にウルトラキャパシターを使うものだったが、リチウムイオン電池の進化の凄まじさを耳にして、大いに興奮していた。

「みんな僕のことを頭がおかしいと思っていたけど、イーロンは一発で気に入ってくれた。『もちろんだ、金を出そう』と言ってくれたんです」とストラウベル。マスクは1万ドルの出資を約束した。目指す予算総額は10万ドルだ。このときに芽生えた絆が、紆余曲折を経ながらも10年以上にわたって続き、世界を変えることになろうとは──。

マスクから、電気自動車の研究開発を手がけるACプロパルジョンという企業を紹介された。1992年創業で、電気自動車の最前線を走っていた会社だ。ACプロパルジョンには、「tzero」という最高級スポーツカーがあった。tzeroは、1997年のデビュー時点で時速0─60マイル加速(時速60マイル=時速約96キロまで加速するのにかかる時間)4・9秒を叩き出した、モンスター級の電気自動車だった。ただし、量産車ではなく、愛好者向けのキットという扱いだった。

ストラウベルは、同社社長のトム・ゲージに「マスクと一緒にtzeroに試乗したい」と依頼した。予想どおり、マスクはこの車に一目惚れだった。それまでの電気自動車といえば、スピードが遅くておもしろみもないというイメージだったが、これは違った。すっかり惚れ込んだマスクは、キットではなく、量産してはどうかと資金提供を持ちかけたが、なかなか色よい返事はもらえなかった。

「あくまでもコンセプトモデルであって、量産するにはもっと細部を作り込む必要がありました。ACプロパルジョンには素晴らしい人たちがそろっていましたが、商売としては見込み薄だったためにマスクのこの提案を断ったのです。その代わり、性能も見た目もイマイチなeボックスというクルマをイーロンに売り込んでいましたけどね」(ストラウベル)この日の会談は見るべき成果がなかったが、マスクの関心がますます高まったのは確かだった。

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