10年で株価160倍!「頭がおかしい」アイデアにイーロンは賭けた

テスラモーターズという革命(1)
アシュリー・バンズ プロフィール

リチウムイオン電池なら1万メートル走れる

2002年ごろ、ストラウベルはロサンゼルスに移り住み、スタンフォード大学の修士課程を修め、ローゼン・モーターズという会社で働くことに決めた。ここは世界初のハイブリッドカーの開発元だった。だが、会社は倒産。ストラウベルは、創業者ハロルド・ローゼンについていくことにした。ローゼンは「静止衛星の父」と呼ばれる高名なエンジニアだった。

 

「電気飛行機を造りたかった。操縦ライセンスを持っているし、空を飛ぶのが大好きなので、うってつけの仕事だと考えました」とストラウベルは語る。その傍ら、夜や週末はベンチャー企業向けのエレクトロニクスコンサルタントとしても活躍した。

ある日、ストラウベルは大学時代の仲間と話しているうちに、ある疑問が浮かんだ。クルマに積んだリチウムイオン電池を太陽光で充電する方法はすでに経験済みだが、ノートPCなどに使われている、いわゆる「18650リチウムイオン電池」を使ったらどうなるか興味がわいたのだ。18650は、単三電池と同じ形状のセル(電池の最小構成単位)をひとまとめにしたようなもの。「これを1万本連結したらどうなるだろうと思ったんです。単純計算だと電気自動車で1万メートル走行可能なんです。興味津々でした」

さっそくストラウベルは、ソーラーカー関係者にもちかけて、リチウムイオン電池搭載の電気自動車開発を打診してみた。彼のアイデアは、空力性能を極限まで追求したスタイリングで、全体の8割がバッテリーという、電気ナマズにタイヤをつけたようなクルマだ。

将来的にこれがどこへ向かうのか、誰にもわからない。いや、当のストラウベルにも確信が持てなかった。実際、自動車メーカーを立ち上げるといったことよりも、リチウムイオン電池のパワーに目を向けてもらうための実験的な性格が強かった。

プロジェクトを進めるには資金が必要だ。ストラウベルは、見本市などに顔を出しては、めぼしい企業に企画書を配り歩いた。だが、誰1人として見向きもしない。そんな日々が続いていたが、2003年秋にイーロン・マスクと巡り合った。

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