用意した昼食が手つかずで乾く

義母は、基本的な家事はできたが、引っ越しの後は疲れやすくなっていたのか、食事を作って欲しいと頼むことが多かった。

私はずっとフリーの仕事をしていたから、家で文章を書いたり打ち合わせに出たりで、たいそうな食事は作れなかった。あるときこんなことがあった。
午後の打ち合わせのために支度をしていたら、容子さん、何かお昼に食べるものを用意してくれと頼まれた。あまり時間がないので、「パスタならできますよ」と答えたら、それでいいと言う。

「レトルトのミートソースがあるから、それでいいですか」
「はい、ありがとう。何でもいただきます」
ということで、慌ててパスタを茹でてミートソースを温め、テーブルに載せた。
「まあ、ありがとうございます」と返事があり、私は打ち合わせに向かった。

打ち合わせの前にお願いされた昼食。とにかく急いででかけたが… Photo by iStock

夕方、帰宅して義母の部屋を覗き、愕然とした。パスタが手つかずで座卓に残っていたのだ。ラップさえかけられていない。当人はベッドで布団をかぶっている。
「あのう、パスタ、お昼のですよね。食べなかったんですか」

すると、彼女は布団から這い出てきて、事も無げにこう言った。
「私は、ミートソースは好かないんだよね」

えええええっ! パスタでいいかとか、ミートソースだけどいいかとか、確認しましたよね? なんでもいただきますって返事しましたよね?
「そりゃそうだけどさ」と不機嫌そうな顔をする。
「こんなに放ってあったものだから、捨てましょうか」と尋ねると
「夜ご飯に食べるからそのままにして」と言った。

そして、自分たちの食事を済ませて1階に降りてくると、なんと、夕方見たときと同じく、ラップもなしに放置されており、もうカピカピに乾いていた。今度は問答無用で廃棄した。
夕飯はどうしたのだろうと確認すると、冷蔵庫にあったもので自分で料理して食べたらしい。では、私が慌てて昼食を準備した意味ってなんだったのだろう。暗澹とした気分になった。