元カリスマホストで、現在は歌舞伎町でホストクラブや飲食店、美容室などを経営する手塚マキさんは、3年前、ある出会いをきっかけに耳が聞こえない人の世界に興味をもつようになった。人と人とのコミュニケーションを生業としてきた手塚さんは、自分が当たり前だと思っていた世界とは別の世界が存在することを知り、その面白さに魅了されたという。

そして、耳が聞こえるほうが幸せと決めつけていた自分の感覚に違和感を抱くようになったそう。聾(ろう)者の人たちの接するなかで彼が得た気づきとは。

※以下、手塚さんによる寄稿。

初めて出会った、聾者の世界

令和3年になりました。すっかりなじんだ元号になりましたが、「令和」を意味する手話をご存知でしょうか? 新元号が公布された2019年4月1日。新元号への喧噪が続いていた翌日に、「令和」を意味する手話も発表されました。 胸の前で、手を花のつぼみのように構え、前に優しくゆっくりフワッと広げる。花の香りがファーッと広がるような。自分に向かってではなく、自分から外に向けて花の香りを漂わせる、そんな手話です。

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意味は、「花のつぼみがゆるやかに開き、やがて花びらが環(わ)となった指先からふくよかな薫りをはなち、和みゆくさまを表しています」ということだそうです。意味を噛み締めながら自分でやってみると、何とも心地よい。自分の手から花の香りが漂ってきそうです。やんちゃとスポーツで指関節がガタガタな僕の手を、軽やかに、情緒を感じさせる手に変身させてくれます。つい何度もやってしまう。癖になる。

そんな令和の中にあって、他者に対する想像力の欠如による発言が問題視されることが多くなってきたように思います。そして、その議論の多くは、建設的に差別をなくす方向に向かえていないのではないでしょうか。 想像できるようになるためには、やはり「知ること」が大事だと私は思っています。

マイノリティと言われる人々を理解しようとすることは、他者への想像力を鍛える契機になり得ます。実際、私も聾者の方々の世界に触れて、改めて自分の見ている景色の狭さに気づきました。