「自分の人生なんだから」

――実際に、母親との関係を整理しようとするにあたり、きっかけとなった出来事はあったのでしょうか。

ある日、友達が「自分の人生なんだから、自分のために生きていいんだよ」と言ってくれたことが大きいです。そう言われて、私は母や実家のことよりも、いま目の前にあるやりたいこと、やるべき仕事、自分自身の生活があることに気が付きました。ずっと縛られて生きてきたので、そんな当たり前のことにも気づけなかったんです。

それを境に、まずはいま目の前にあることを一生懸命やろう、自分のために生きよう、とひとつずつ懸命にこなしていくことにしました。そうすると、いままでべったりとこびりついていた母のことなど、ふとした瞬間にも思い出さなくなっていきましたね。

母親にただ喜んでもらいたかった、だけど… 『おかあさんといっしょがつらかった』より

――その後、彩野さんは理解あるパートナーと結婚をされました。

はい、夫は、家庭環境や悩みは人の数だけ存在すること、自身の辛さは本人にしかわからないこと、を理解している人です。なので、たとえば「そんなことで悩んでいるの?」「親なんだから」のようなことは決して言いません。たとえば私が突然のフラッシュバックで辛くなっている時にも、余計な詮索をせず、黙って見守っていてくれます。

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――作品を描いて、母親との関係は、幼少の頃よりも整理できたのでしょうか。

90%くらい、整理できたかなと思います。のこり10%くらいとして、何かのきっかけで崩れたりしないかな、という不安は常にありますが、それでも実家から離れたことで確実に良くなっています。ここに辿り着くまでは、長い時間がかかりましたね。