親と一緒にいるのが辛い――過干渉や暴言・暴力などで、子供を思い通りに支配したり、自分を優先して子供に無関心な「毒親」が今や社会問題となっている。幼少期に受けた親からの対応がトラウマとなり、大人になってからも生活や対人関係に影響を及ぼすことも少なくない。

そんな毒親との日々を綴った実録エッセイ漫画『おかあさんといっしょがつらかった』が大きな話題となっている。作者の彩野たまこさんと実の母親とのエピソードを記録したもので、子供に罵詈雑言を浴びせ、事あるごとに暴力をふるい、妄信する新興宗教に付き合わせ、挙句の果てに汚部屋にこもり酒に逃げる…“おかあさんといっしょ”の生活が、彩野さんを追い詰めていく。

本記事では彩野さんに作品や家族への思いを聞いた。自らの体験を世に発信する…そこには幾度もの葛藤があったという――。

2月10日に単行本が発売!

「どうして親なのに…」

――近年、「毒親」という言葉を随分と耳にするようになりました。けれども、いざ自身の家庭環境を作品化するとなると、勇気や覚悟が必要だったのではないでしょうか。

そうですね、最初は抵抗がありましたし、怖かったです。

でも、以前から私の家庭環境や母について興味を持っている友人や知人がいたことが後押しになりました。自分でも「どうしてずっと母は私の中にトラウマとして残り続けているんだろう」と、改めて原因を掘り下げてみたいという思いもありました。そして担当編集の方が企画にまとめてくださり、とても丁寧に私の過去を聞いてくださったので、作品化することができました。

『おかあさんといっしょがつらかった』より
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――振り返ると、いつから「自分の親が毒親である」と気づきはじめたのでしょうか。

私自身ずっと、常日頃から母と過ごしていても不安定な気持ちにしかならず、「どうして親なのに普通に接することができないんだろう」と悩んでいたんです。

世間に「毒親」という言葉が浸透し始めた頃、たまたまネットか何かでその単語を見たことがきっかけで、認識したのだと思います。「こういう風に表現されることもあるんだ」「表現してもいいんだ」と、すごく驚いたことを覚えています。

ただ、私は外の人間関係にはすごく恵まれていて、中学や高校の時は、友達の存在や、学校の時間に救われていました。本当に他愛もない、年相応の恋愛話だとか、好きなものの話を延々と喋って笑っているような学生時代でした。

でもそんな中、友達が当たり前のように「お母さんと買い物に行ったんだ」と話しているのを聞いた時には、「羨ましいな。私もいつかできたりするのかな」などと、度々考えさせられてはいましたね。

――そんな周囲との違いを感じて、ほかの大人に相談してみるなどの具体的なアクションはされたのでしょうか。

いえ、私にとっては不安定な家庭が当たり前だったので。頼れそうで優しい学校の先生はたくさんいたのですが、あくまで自然な感情のなかで「これは自分の家のことだから、よその人は立ち入りできないことなんだ」と思っていて。ある種の諦念と、どうしようもなさは、抱いていましたね。