世界で生産される食料のおよそ3分の1が廃棄されているフードロス問題。一方で、世界には飢餓や貧困に苦しむ人たちがいます。食の問題は山積みですが、その解決へのヒントは私たちの近くにありました。もったいない精神をはじめ、素材と真摯に向き合う日本料理や発酵食。日本古来の文化や美学が、世界の食をつなぐ架け橋となるかもしれません。

季節に寄り添い、手間を惜しまず、自然の恵みを最大限に生かすこと。伝統的な日本料理には、数々の叡智が詰まっている。その知恵、知識、美学から、私たちが今、学べることとは。

素材に対して受け身になり
「足るを知る」こと

3代目として活躍している高橋拓児さん。140坪という広さの厨房と料理人たちの動きに、常に目を配る。

世界最大の農産物輸入国として、たくさんの食料品を輸入する一方で、食材を余らせたり、使い忘れてしまって腐らせたり。大量の食べ残しや廃棄によるフードロスも問題となっている現代の日本。その解決のヒントが、日本の伝統的な料理にあるかもしれない。そこで創業85年の京都の名料亭〈木乃婦〉の三代目、高橋拓児さんにお話をうかがった。(※高は本来ははしご高)

京都の四条駅付近に位置する〈木乃婦〉●住所/京都府京都市下京区新町通仏光寺下る岩戸山町416

木乃婦は旬の魚介類や野菜を使い、惜しみなく手間をかけた繊細な味付けの料理を出している。しかし贅を極めた料理かというと決してそうではなく、「日本料理の基本は“足るを知る”なのです」と高橋さん。その根底にあるのは精進料理の考え方だ。

「精進料理とは、人間が1日に食べるミニマムサイズの料理。必要量を最小限まで削ぎ落としたものです」

精進料理には肉を使わないなどの禁忌があり、それを守るとおのずと1食500kcalになるという。3食で1500kcalは、成人男性が必要な最小限のカロリーとのこと。

自分にとっての“底=最小限の量”を知っておくことが、とても大事なのだと高橋さん。

「毎日、必要なエネルギーは違います。家庭なら一汁一菜を基本に、今日はよく動いたから焼きものを足そう、ごはんを足そうというふうに、その日の活動量に合わせて量を調整すればいい。でもそれ以上は必要ない。それが“足るを知る”ということです」

京都の料亭〈木乃婦〉の高橋拓児さんが手がける精進料理。日本料理は“足るを知る”ことが基本にある。それがわかればおのずと食品を廃棄するという発想はなくなるという。