研究室に欲しい! 実験の相棒「マイクロピペット」の最新トレンド

世界最軽量ピペットの開発者を直撃!
リケラボ プロフィール

ピペットの進化における重要なターニングポイント

高野さん:そして「MODEL 5000」の発売から数年を経て、これまでのピペットの進化の歴史のなかでも重要なターニングポイントが訪れます。オートクレーブにかけられるようになったのです。

弊社の製品でいうところの1993年に登場した「AUTOCLAVABLE BenchMate」から、まるごと蒸気滅菌できるようになりました。背景には、1980年代後半ごろから遺伝子に関する研究が盛んになったこと、それにともない滅菌できる検査機器へのニーズが高まったことが挙げられます。

高橋さん:以前はピペットを滅菌する手段がなく、次亜塩素酸などで表面を拭き取るしかありませんでした。そのため、メンテナンスで当社にピペットを預けてもらう際、薬品や血液が付着したままのことも珍しくなかったんです。

それではメンテナンス作業に危険が伴うので、もともとは当社の作業者をそういった危険から守るためにも、オートクレーブ対応の製品を開発することになりました。すると、時を同じくして遺伝子に関する研究が盛んになり、滅菌できる検査機器へのニーズが高まって、当社の製品がさらに浸透する後押しにもなったのです。

──社員の方を守るためにつけた機能が、その後の研究トレンドに見事合致したとは、タイミングの妙ですね!

高橋さん:そして2000年に「Nichipet」シリーズが登場します。ちなみに、以前の「JUSTOR」シリーズは丸い筒のような形をしていますが、「Nichipet」シリーズ誕生以降は形状が少し複雑なものになっています。これは、CADなどの設計に関わるテクノロジーが普及したから。CADが使えなかった時代は頭のなかで想像しながら手書きで図面を描いていました。60個近い部品ひとつひとつの図面ももちろんすべて手書きです。それがすべてコンピュータ上でできるようになったことで緻密な計算も可能になり、複雑な形状や微妙な曲線の表現もできるようになったのです。

CADの活用によってより複雑な形状が実現可能に

──CADの普及が、実験器具の進化にも大きな影響を与えたんですね。でも、CADがなかった頃の設計士の方々の技術の高さにも頭が下がりますね…!

高野さん:容量的にも、それまでは小さいものでも10μLくらいまでだったのが、DNAを扱う研究でさらに微細な量を取る必要が出てきたことで、より小さな容量に対応したピペットが増えていきました。そして、ここ数年でさらにプラスアルファで軽さが求められるようになってきた、という現在地に至ります。

耐久性、軽量化、ストローク荷重など、使い手の様々な声に対応するために常に進化を重ねてきたニチリョーピペットの歩み
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──なるほど…「Nichipet Air」誕生までの歴史がよくわかりました。その時代時代にいろいろな改良が加えられてきたのが、とても興味深かったです。それでは最後に、現在地のその先は何を目指すのか、今後の意気込みをひと言お聞かせください!

高野さん:我々の事業は納入した製品のメンテナンスを通じてお客さまの声を直接聞くことができる機会も多く、これは製品開発において大きな強みだと思っています。今後も実際に製品を使用される皆さんのご意見やご要望と向き合い、世界の競合他社さんたちとも切磋琢磨しながら時代のニーズに合ったピペットを生み出していけたらと考えています。

その一方で新しい製品を生み出すことだけではなく「愛用のピペットをできるだけ永く使いたい」という声にも応えたいと思っています。国内メーカーならではの丁寧なアフターケア、熟練の技術者によるリペアサービスも当社の強みであり、これからも変わらずこだわり続けたい部分です。

──ピペットは研究の相棒と言ってもいいほど思い入れの強い実験器具。メーカーの方々が、こんなに一生懸命ユーザーのことを考えて作ってくださっているということを知る機会があり本当によかったです。今まで以上に大事に使います。高野さん、徳地さん、高橋さん、貴重なお話をありがとうございました!

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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