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ヒト属の顔の変化は、サピエンスへの進化そのものだった!

二足歩行の進化も脳の容積増大もわかる

チンパンジーと分かれてからの5段階

我々の祖先は、アフリカで誕生して以来、環境の変動に適応して、身体をさまざまに進化させてきた。その歴史ドラマのなかで、顔はつねに主役か、重要な脇役を演じてきた。それは顔が、ヒトに「人間らしさ」をもたらすさまざまな特徴の大部分に密接にかかわっているからである。最もヒトらしい特徴とされる直立二足歩行さえ、顔と無関係ではない。

大型類人猿のうちで、ヒトに最も近縁なのはチンパンジーである。形態分析、血清タンパクの分析、あるいは最新のDNAの分析からもはっきりとしている(DNAのヒトとの違いは2%以下)。そして、チンパンジーとヒトの共通祖先から我々ヒトに進化した。この進化の道のりはかなり複雑だが、大筋では以下のような5段階の理解でよいだろう。

【図】人類進化の5段階人類進化の5段階。学名に「ホモ」という属名がつく原人・旧人・新人をまとめて「ホモ属人類」と呼び、3段階とすることもある
第1段階「初期猿人
700万〜600万年前にアフリカで誕生。短距離なら地上を二足歩行できた。森や疎林で主に果物を食べ、把握性のある手と足で木登りをする
第2段階「猿人
400万年ほど前に出現。直立二足歩行が発達して草原にも進出。主に乾燥した硬い植物を食べるようになった。ただし疎林にも依存していた。
第3段階「原人
200万年ほど前のアフリカで誕生。脚も長くなり直立二足歩行が完成。疎林から離れ、草原に拡がった。道具を使い、一部は火も使い、肉を含む多様な食物を食べ、やがて180万年ほど前からユーラシアに拡散。
第4段階「旧人
やはりアフリカで70万年ほど前に出現し、判断力や生活技術を向上させ、再びユーラシアへ拡がった。
第5段階「新人」(ホモ・サピエンス)
20万年ほど前にアフリカで誕生。創意工夫のある戦略的な頭脳を活用して、6万年ほど前から世界中に拡散。

段階を踏むごとに培われた"人間らしさ"とは

ヒトがほかの哺乳類あるいは霊長類と違う点、つまり"人間らしさ"と呼ぶべき特徴は数多くあるが、その中で代表的なものは、直立二足歩行の発達手の母指対向把握能力(親指をほかの指と向かい合わせて物を握ること)の発達咀嚼器官の変化大脳の拡大、そして寿命の延長とされている。

【図】人間らしさの発達人間らしさの発達

人類進化の早い時期に獲得された直立二足歩行は、移動能力を向上させて新しい環境への進出を可能にしただけでなく、自由になった手は母指対向把握能力を発達させた。

その結果、物を運び、道具を使うことで大脳の発達がもたらされた。二足歩行が顔の変化と無関係でないのは、行動範囲が広がって多様化した食物を咀嚼するために歯や顎が拡大(あるいは縮小)したこと、また、結果として大きくなった脳を収めるために、頭の大きさや形状が変化したためである。

大脳の拡大は、道具の使用や言語の発達など"人間らしさ"のきわみとしての文化の発達につながった。そして、寿命の延長は、大脳の発達とほぼ比例する。

咀嚼器官は、我々ではすでに退化しているが、猿人で小臼歯と大臼歯が大きくなるなど、部分的に拡大し、原人以降では歯全体が退縮した。これらの変化は、人類が異なる環境に暮らしの場を広げていった際に食物の質が変わり、それに歯と顎が適応したからだ。犬歯は、本来は咀嚼器官だが、霊長類では攻撃の道具となり、暴力性、すなわち社会の構築と関係する。

では、そうした脳の容積や口部といった顔の変化と進化の関係が、5段階のなかでどう現れているのかをみてみよう。

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