2020年に多くの名店も閉店へ

有楽町の「レバンテ」
新橋にあったうどんすきの名店「美々卯」
神保町の餃子店「スヰートポーズ」
新橋の居酒屋「三州屋」

これは、2020年に閉店した「名店」といわれた料理店のごく一部だ。ここまで有名なお店でなくとも、閉店したお店を思い返し、「あの店のこの料理が食べたい」と思うことは少なくないのではないか。コロナとは関係なく、跡継ぎがなく、大盛況のお店なのに歴史に幕を下ろす飲食店もある。

味を残すことは「まちの文化」を残すこと。名店の味をきちんと残したいと本気で動き始めたのが、新橋の居酒屋「烏森百薬」を経営する株式会社ミナデインの代表・大久保伸隆さん(37歳)だ。自ら飲食店を4店舗経営し、「儲ける個人居酒屋」を実践している姿が2020年2月に「ガイアの夜明け」でも紹介された。きちんと儲けながら、文化を残す。それはどんな仕組みなのか。大久保さん本人に話を聞いた。

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「町の文化がなくなってしまう」危機感

大久保さんと言えば大手居酒屋チェーン「塚田農場」を経営する「エー・ピー・カンパニー」の副社長として活躍、「飲食店に重要なのは人材」をモットーに、アルバイトの教育にも力を入れ、会社を右肩上がりに成長させたときの立役者でもある。それから「もっと距離の近い場所でお客様に接したい」と独立、個人居酒屋を新橋に3店舗、千葉にファミリー向けのレストランを経営している。

2020年の年始に話を伺ったときの大久保さん。今回はZoomで話を伺った 撮影/杉山和行

通常23時半まで開店している居酒屋でありながら8時までの時短要請はキツイが、「コロナの緊急事態宣言は、1回目の時の方が大変でしたね。2回目は国からの補助金があるので、雇用を確保したまま、幸い順調にお店を開けることができています」という。

大久保さんが「名店の味の再現をしたい」と思ったのは、コロナで閉店の店が相次いでいる中、「まちの文化がなくなってしまう」という危機感からだった。
『まちに個性を』というのがうちの会社のビジョン。名店がまちの個性をつくる。だから新橋にある3店舗もすべてそれぞれの個性を出すようにしています。でもお店が閉店してしまったら、その文化がなくなってしまいますよね」

そんな風に思っていたときに、ある「出会い」があった。

「知人から、事務所のある神田でずっと通っていた洋食屋が閉店してしまうと連絡をもらったんです。『ビーバー』というお店で、『大久保さん、この店の料理が食べられなくなるのが寂しいんだけどどうにかしてくれませんか』と書かれていました。それでお母さんに会いに行ったら。お母さんも62年やっていたお父さんのレシピだから残したいという。店主もレシピを残したい、常連さんもそのレシピを残したいというわけです。課題があるわけだから、やる意義はあるなと思いました。それで、『まぼろし商店』という名前の『店』を作ろうということになったんです」

神田の洋食店「ビーバー」

名店の味を残したい。そのこと自体は、決して真新しいアイデアではないかもしれない。名店の名前がついたコラボ商品なども多くある。ただ、大久保さんがやりたいのは閉店する名店の味をその物語と客の想いごと残したいということだった。

「名店のレシピを残す活動はぼくが関わっているものでもほかにもありますが、それはまだオープンしているお店なんですよね。でも飲食店がつぶれるスピードが早くて、まちから名店がなくなっていく、それはイコール『まちの個性』がなくなってしまうということだと思った。それをなんとかしたいと」