子どもは親を選べない。生まれた時からの「違い」は、誰にでもあるし、まったく平等な人生なんてこの世にはない。ではどうしたらその違いを超えて、誰もが幸せに生きていけるだろう。「香水」で一躍時の人となった瑛人さんがアルバム「すっからかん」に収録した「ハッピーになれよ」のMVが話題を呼んでいる。ジャーナリストの島沢優子さんは、そこには、「幸せに生きる」ためのヒントが隠れているという。それはどういうことなのだろうか。

両親が離婚した時の体験を歌っている

「ハッピーになれよ」
瑛人が自らの体験を元に作ったこの曲、もう聴かれた方は多いだろう。幼少期に両親が離婚、それから2年後に小学4年生だった瑛人が母親のために歌った曲がベースだ。

瑛人/ハッピーになれよ(Official Music Video)

「歌の中にいる小学生の瑛人が自分と重なって、泣いてしまう」
そう話すのは、50代の自営業A子さんだ。
何度聞いても、涙がこぼれる。
試しにネットで検索すると「涙なくして聴けない」「泣ける」の声があふれていた。
A子さんは、なぜ泣いてしまうのか。

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大人の顔色をうかがって生きていた

彼女が小さかったころ、7人家族だった。
祖父母に両親、弟2人。祖父とともに小さな印刷工場を営む父親は、毎夜遅くまで遊びまわり昼に起きてきた。家業は年老いた祖父母と、20歳で1歳年上の父のもとへ嫁いだ母親が懸命に支えた。祖父母は父親を「この、ろくでなしが」となじったが、そのしわ寄せは母親や子どもたちにやってきて父親からたびたび暴力をふるわれた。それを祖父母は一切止めもしなかった。

「毎日が私にとって戦争。息がつけないというか気が休まらない。祖母と母の仲も悪く、常に大人の顔色をうかがう子どもだった」

両親のけんかが絶えず、母親は家出を繰り返した。隣町にある母親の実家とたびたび往復する生活だった。母親の実家で夜寝ていると、いつの間にか訪れた父親と母方の祖父が、さめざめと泣く母に離婚を思いとどまるよう説得する声が聞こえた。翌朝は父親が再び迎えに来る。このパターンで土日がつぶれた。

こう書くと、「かわいそうな子ども時代」の物語に聞こえるが、A子さんは少し違った。

「最初は母親に『出てくよ!荷物まとめなさい』と言われ、何のことかわからないまま支度をしてたけど、そのうち両親のやりとりや空気で(こりゃ家出だな)とわかるの。先にまとめて準備するようになった。それに、家を出れば両親の不和から逃れられる。戦いの前線から離れて一時休止、みたいな。母方の実家のほうが裕福で居心地もよかったので、親たちがけんかをしたら、さあ家出カモン!みたいな気持ちだった」