大事にしたい記憶
——常田さんがオーケストラを指揮するところから始まる演奏、素晴らしかったです。番組中、かつて小澤征爾さんのオーケストラに参加したことが「美しさの基準の幹になっている」とおっしゃっているのが印象的でしたが、その小澤さんの姿とちょっとオーバーラップしました。
いやいや! レベルが違いすぎておこがましいから、そんなこと言うの、やめてください。あの曲に関して言えば、俺は演奏でやることが特にない箇所があったので「ただそこに立ってた」ってだけです……。

——でも、とても良いシーンでした。小澤さんのオーケストラに参加した経験をお持ちなんですよね。
在学中と大学辞めた後だから、19、20歳の頃、チェリストとして何回かオケに参加しました。その時の小澤さんの表情と動きをよく覚えているんです。
小澤さんは演奏中、自身の表情の変化でプレイヤーから最高の音を引き出し、ひとつの方向にまとめあげていくんです。本当にすごい。その様は、とても大事な記憶として残っています。
だから、もちろん俺なんか足元にも及ばないけれど、各プレイヤーのポテンシャルを最大限引き出す姿勢を見習いたいと思っています。