「100年単位」の作品を作る
——NHKスペシャル『2030 未来への分岐点』に提供したテーマ音楽のタイトルは『2992』。これは常田さんが生まれた1992年の1000年後にあたる数字です。番組が設定した近未来の2030年ではなく、1000年後の数字を出してきたことに番組スタッフも驚いたという話をうかがいました。「2992」という数字を持ってきた理由はなんですか?
時代を超える強度のあるものを作りたいから。NHKの「10年後の世界がどうなっているか」というテーマに着想を得て、時代を超えて残っていく作品を作りたい、と改めて思いました。
10年後は少し近すぎるというか、なんとなく予想がつく未来なんで、もっと先の未来を目指したいんですよね。と言いつつ、10年ってそれなりに長いとは思うけど(笑)。
——2013年にKing Gnuの前身「Srv.Vinci」(サーバ・ヴィンチ)を始めた常田さんが今こうしていることを考えると……。
そう考えると、10年はやっぱりそれなりに長いか……。まあ、音楽もアートもそうですが、クリエイターとして100年単位で時代を超えるものを作りたいという思いをずっと持っている、ということ。それこそ、クラッシック音楽は普通に何百年も前の曲が今も残っているわけだし。

——昨年、親しくされている俳優の綾野剛さんにプレゼントされるまで、しばらくテレビを持たない生活をしていたそうですね。
そうそう、テレビもらいました。
——そんなテレビをほとんど観ない常田さんがNHKスペシャルの番組テーマ曲を作る難しさはありましたか。また、密着取材された特別番組『常田大希 破壊と構築』の感想もお聞かせください。
実家はNHKをよく観る家庭で、NHKスペシャルもなんとはなしに観ていたから、民放ではなかなか作れない硬派な番組というイメージは持っていました。
特別番組ではオーケストラと演奏しましたが、これは以前からやりたくても活動規模的にできなかった編成で。音楽と真正面から向き合う姿勢を番組と共有しながら作ることができて、ありがたかったですよ。