ロシア製ワクチン「スプートニクV」に欧州が関心を示し始めた理由

ネガティブキャンペーン合戦の末に
小林 雅一 プロフィール

スプートニクVとはどんなワクチンか

スプートニクVは、モスクワにある国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所で開発された。

この研究所はもともと、ニコライ・ガマレヤというロシア人医師によって1891年に創立された私営組織だったが、1917年の十月革命後はソビエト政府に接収されて国営研究所となり、今日に至っている。要するにロシア政府が後ろ盾となっている非常に由緒ある疫学研究所だ。

同研究所を設立する前のガマレヤ医師は、19世紀の有名なフランスの細菌学者ルイ・パスツールに師事して細菌学を修めた。パスツールは、1796年に世界初のワクチン接種を実施した英国の医師エドワード・ジェンナーの後を追って、近代的なワクチン接種の手法を開発したことで知られる。

〔PHOTO〕Gettyimages

ソ連邦の樹立後に国営化されたガマレヤ研究所は、天然痘ワクチンを開発して、その撲滅キャンペーンを展開するなど感染症対策の長い歴史を有する。近年では2012年以降にサウジ・アラビアなど中東や韓国・中国で流行した「MERS(中東呼吸器症候群)」や、2014年以降に西アフリカで広がったエボラ出血熱のワクチン開発も手掛けた。

もっとも、これらのワクチンは開発に時間がかかり過ぎて、製品が完成したときには感染症の流行はほぼ終息していたため、実際に使われることはほとんどなかったようだ。

ただ、これらの開発プロジェクトを通じて培われた技術は無駄にはならなかった。ガマレヤ研究所がMERSやエボラ対策に開発したワクチンは「ベクター型」と呼ばれるが、今回のスプートニクVも同じくベクター型ワクチンだ。

 

ベクター型は別名「アデノ・ウイルス型」のワクチンとも呼ばれ、もともと風邪を引き起こすアデノ・ウイルスを無毒化してベクター(運び屋)役に仕立て上げ、これを使って新型コロナ・ウイルスの遺伝子を人の体内に送り込む。

すると、この遺伝子が細胞内でコロナウイルスのスパイクタンパク質を作り出し、それに反応して私たちの免疫系がコロナへの抗体を作り出すことでワクチンとして働くことになる。

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