日本においてアートが浸透してこなかった理由として国民的アーティストの不在、そして育成に対する意識の低さは既に述べた。そしてこのコロナ禍において一層若手アーティストの置かれる状況は厳しさを増している。
問題を自覚しながら解決を他人にだけ任せるのであれば僕も無責任な批判者に過ぎない。
そこで、昨年アート関係者に呼びかけ『ARTIST NEW GATE』というコンクールを創設した。グランプリを受賞したアーティストには賞金以外にもプロとして活動するためのプロモーションや有名百貨店での個展開催が約束されている。
意外に思われるかも知れないが、美大においてはほとんどの場合、プロのアーティストになる方法は教えてくれない。
僕自身、学生時代その事で大変に苦労した経験がこのコンクールの創設の動機にもなっている。
困ったならここを目指せばいい、そんな灯台のようなコンクールがあればとずっと考えていた。そして大学が機能不全に陥っているコロナ禍の中においては一層そういった灯台の役割は必要で、結果的にその問題意識を多くの業界関係者が共有してくれたことは嬉しい驚きであった。
応募総数は第1回にもかかわらず300人を超えた。
とはいえ反響の大きさはある意味、それだけ不遇な環境に置かれている若手アーティストが多いという証明でもあるのだ。